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307 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/29(日) 19 55 [ imAIk9NE ] 投下終了です。 長い・・・! 読み飛ばしてもらっても結構です。 では質問、ご意見、ご感想お待ちしております。 308 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/08/29(日) 21 30 [ GbrAaGvs ] この世界のマナが無限なら日本のエネルギー問題は解決ですね。 熱源があれば蒸気タービンを作動させて発電できます。 呪文は精神を集中するための手段であり、発音にはあまり意味はないようですね。 魔術士オーフェン方式でしょうか。 309 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/08/29(日) 22 21 [ MSZ8PKC. ] なんか今、思わず「鷹の目と長い腕」ってフレーズが浮かびますた。 魔力の集積点が見えるって事は、魔法使いを「目」自衛隊の狙撃手を「腕」として 発動前破壊工作とかも出来たりしてw ・・・ところで、魔法陣なんかを途中でぶちこわしたらどうなるんでしょう? 310 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/09/01(水) 01 01 [ kBCweWIM ] しかし中国大陸沿岸がアジェントの勢力圏となると、今度は日本はどういう行動をとるのだろうか? バルトと協力すれば機械の問題なども改善されるのではないか? 311 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/09/02(木) 20 01 [ M0xVvSKo ] 召喚された人々の島は東南アジアを指しているのか? 312 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/09/02(木) 21 39 [ M0xVvSKo ] 彼女は自国以外の国際情勢をどれくらい知っているの? 313 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/09/02(木) 21 50 [ 5gTyQo9g ] 新生児をひとり用意して、ファンタジー世界人と日本人が交互に発音と文法を教えたら、その子は何語を覚えるのかな? た抜き言葉「たなかただし」=「なかだし」はファンタジー世界人に通用するかな? 翻訳魔法はどこまで融通が効くんだろう。 314 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/09/03(金) 07 36 [ XszmsgnI ] 日本人とアメリカ人の国際結婚で両親が双方の母国語で会話するのを聞いた子供は両方の言葉を覚えます。 何故かは解りりませんが文法などは混ざりません。 小さい頃から外国暮らしが長く、幼少期を数カ国で過ごした子供が6ヶ国語を話せるようになったというのもよくある話です。 315 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/04(土) 16 49 [ imAIk9NE ] 「なかだし」て・・・。 っと更新遅れてすみません。 たぶん今日か明日にはいきます。 召還された島々は韓国や台湾あたりです。 316 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/09/04(土) 20 33 [ mFs2.6Hg ] エルフやドワーフの他にどんな種族がいるの? たとえばバードマンとかワーキャットとか。 317 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/04(土) 23 17 [ imAIk9NE ] 人外種族は随時出していくつもりです。 彼らがいなければファンタジーは始まりませんから。 翻訳魔法については本編で説明予定です。 と言いつつ説明を後回しにしている本編投下。
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ダンジョンズ&ドラゴンズの世界観について簡単に説明します。 時代背景 特にDMから説明がない限りは、中世ヨーロッパ-Mideval-となります。 (Mideval 5 - 15世紀) 中世ヨーロッパと表現した場合レンジが広すぎる為、具体的な生活スタイルを指定することは難しくなっています。 イメージでは、貧困な村は5世紀、栄えた都市は15世紀やそれ以降のスタイルと考えると分かりやすいかもしれません。 しかしながら、生活様式を正確に捉える必要は無く、正確な描写については適宜DMとプレイヤーで相談していくことになります。 神と精霊 一般的にファンタジー世界では、神と精霊は信仰の対象であり、実在する存在です。 人間の住む世界、物質世界の外には精霊界、神界と広がっています。 したがって、地球の外は宇宙空間という認識ではなく、そこは未知の領域となります。 地球という概念も無く、神により創造された世界として扱います。 (地動説の発表は16世紀。時代背景的にも、宗教>物理の世界です) 情報の入手 情報を入手する方法は、誰かに聞く、自分で見るしかありません。 書籍を頼りにしても、多くの人種・種族が存在する世界のため文字を読むことが困難です。 ポイント 使用可能言語の制約により、アクセスできる情報が制限されます。 したがって、人と触れ合う事が多く、旅をする冒険者や商人が多くの情報を持っている事になります。 特に、吟遊詩人は、冒険をしながら情報を伝えるという役割を持ちます。
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※投稿者は作者とは別人です 725 :外伝:2009/02/25(水) 21 31 42 ID xBb3.8PA0 昨夜から降り続いた雨が一段落したうす曇りの空の下 ジープと装甲車と自走砲からなる護衛を従えたトラックの車列が 道路とは名ばかりの泥濘の中をもがくように前進していた 「なんかものものしいですねえ」 補給物資を満載したGM製軍用トラックのハンドルを握る運転手のシェリー (頭頂部にピンと立った二等辺三角形の耳とズボン飛び出した思わずモフりたくなる ようなフサフサの尾がチャーミング)が言った 「最近何かと物騒だからな」 助手席に座るコンボイの指揮官 ラルストン少佐は右隣でパタパタと動く赤茶色の毛皮の塊りに手を伸ばそうとする 誘惑と戦いながら出来るだけ渋い口調を心がけて答えた 北大陸上陸以来快進撃を続けるアメリカ軍ではあったが 最前線の機械化部隊は往々にして兵站を無視して突っ走る傾向があり 伸びきった補給線をどう維持するかという問題が浮上していた それまでの輸送手段といえば運河を利用した艀か荷馬車くらいしかなかった ファンタジー世界である いきおい陸上輸送はアメリカ軍が持ち込んだフォード、GM、ダッジ等のトラック群が 一手に引き受けることになる チート国家の底力を見せ付けるアメリカは必要な数のトラックを供給することはできたが 運転手ばかりは工場で量産するというわけにはいかない そこでアメリカ軍では現地採用の獣人を速成教育で運転手に仕立てた 臨時のトラック輸送隊をこの任務に当てることにした レッドフォックス・エキスプレスと呼ばれたこの部隊は 妙齢の女性ドライバーが多かったため前線の兵士達に絶大な人気があったのだが 急進撃を続ける最前線部隊に補給を行うためには 残敵の掃討が済んでいない地域を走破せざるを得ない場合もあり 輸送隊と戦線後方に取り残されたシホールアンル軍との間で遭遇戦が行われるという 事態も発生していた そこで今回のコンボイには護衛として第501対空大隊から分派された M16自走砲―四連装の50口径機関銃は地上目標に対しても破壊的な威力を発揮する ことからミートチョッパーと呼ばれている-二両と第25騎兵偵察中隊のM8装甲車二両 そして第714戦車駆逐大隊から抽出されたM18戦車駆逐車四両が加わっていた 今回初参加のM18はトーションンバーサスペンションを採用したスマートな外観で 一見戦車のようだが砲塔はオープントップで装甲も機関銃弾に耐えられる程度のもの でしかない 726 :外伝:2009/02/25(水) 21 32 27 ID xBb3.8PA0 そのかわり機動力は装軌式戦闘車輌としてはトップクラスで道路状態が良ければ 時速50マイルオーバーの最高速度を発揮できる 武装はM4中戦車の後期型と同じ52口径76ミリ砲を装備しており 主力戦車と同等の火力と快速を生かしたヒットエンドラン戦法で 戦車狩りに活躍することが期待されていたのだが転移後の戦場では 狩るべき敵戦車はおらず通常の自走砲のように火力支援を行うか 軽快なフットワークを活用した威力偵察などに用いられていた 今回はトラックに追走できる足の速さを買われての起用である こうして三十台を越すトラックと二両の装甲車 四両の戦車駆逐車と二両のMGMC(多連装銃搭載車)からなるコンボイは 無数の無限軌道に掘り返された未舗装道路をガタピシと揺れながら最前線の 補給ポイントであるティレルの街に向って行進していたのだが 「あれ?」 先頭のトラックを運転していたシェリーがブレーキを踏んだ 「いきなりどうした?」 突然の急ブレーキにつんのめったラルストンが問い掛ける 「いやなんかおかしいような…」 シェリーは交差点に立つ道路標識をじっと凝視している そこにやって来たのはM3短機関銃を小脇に抱えMPの腕章を付けた中尉だった 「どうかしましたか?」 「あの~私のカン違いかもしれないんですけど、こっちはティレルへ行く道じゃ ないと思うんです」 標識が示す方向を指差してシェリーが言う 「成程、それは貴女のカン違いですね。私は二時間前にこの道を通って ティレルから来たばかりですから」 どこか俳優のタイ・ハーディンに似た二枚目のMPが微笑むと墓石のように白い歯が 陽の光を反射してキラリと輝く 「もう一つ考えられることがあるぞ」 ラルストンが口を挟んだ 「君が嘘をついているとしたらどうだ?」 何気ない口調だが言葉の裏にピンと張り詰めた何かがあった 「何をおっしゃりたいんです?」 「情報によると敵は後方撹乱のためアメリカ兵に成り済ます訓練をした兵士を 用意しているらしい」 いつのまにかラルストンの手は腰のホルスターに収まったGIコルトに置かれている 727 :外伝:2009/02/25(水) 21 33 13 ID xBb3.8PA0 「君の郷里(クニ)はどこだ?」 「アイダホですよ、州都はボイシで特産品はポテト。私が生まれたのは ロッキー山脈の麓のケチャムというド田舎です。これでいいですか?」 「その程度の情報は捕虜から入手できるからな」 ラルストンは警戒を解かない あるいは色男に対する本能的な反感かもしれない (ラルストンはカール・マルデンに似ていた) 「あの、本当に私のカン違いかもしれないですから…」 可哀想なくらいに狼狽するシェリー 「それではとって置きの小噺を披露しましょう、シホットが逆立ちしても思いつかない アメリカンジョークの真髄を!」 「面白い、やってみろ」 いいのかそれで? 「シャーロック・ホームズとワトソンがキャンプに出かけた。ある晩、ワトソンを 叩き起こしたホームズは満天の星空を指差して何か気付いたことはあるかと聞いた。 ワトソンは大宇宙の神秘とロマンについて滔々と語ったあと君は何に気付いた?と 尋ねかえした。ホームズは言った『誰かにテントを盗まれたんだよ!』HA!HA! HA!」 ペシペシと膝を叩いて大笑いするMPに生暖かい視線を注ぐラルストン 「オーケー、そんなくそつまらないジョークで大笑いできる奴は間違いなく アイダホ出身だ」 本当にいいのかそれで? 「バカタレが」 道路標識に従い行軍を再開したコンボイを見送ったMP-シホールアンル軍第303特殊 作戦部隊のカストリ・ブチョン中尉-は唇を歪めると獲物が罠に掛かったことを知らせる 魔法通信を送った
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此れまで書いたのをまとめてみる 世界観 “現代日本より少し未来”の日本がファンタジー世界に召喚される 偵察衛星で観測された地球は、魔物亜人が闊歩する中世風の魔法世界であった 技術力 日本:現代より2~3年程未来 F世界:14世紀頃っぽい 長距離航海可能なガレー船 火薬技術無し 魔法で船や保存法の能力など技術力に比して性能は底上げされている 飛竜や魔法など正体不明の技術を使う 大まかな話の流れ 1、日本以外の通信が遮断 2、異常な生物を率いた中世風軍隊(バッサン軍)が攻めてくる、竹島駐留韓国警備隊全滅 3、非常事態宣言で自衛隊が動く、エルブ国要人救助 4、友好的なエルブと国交を結ぶ、自衛隊派遣 5、限定的な交易開始、エルブを通して情報収集と他国へのアプローチ開始 6、エルブ要人さらわれる←今ここ 時系列順の話 1~3まで・・・とある人達の戦闘記録(改訂前) 4、5・・・・・とあるドワーフの日記 5・・・・・・・とある人達の戦闘記録(改訂後) 6・・・・・・・とあるドワーフの日記の(赤沢2等陸曹回想録)←今ここ 遥か未来・・・・NHKにんげんドキュメント・補給仕官と向き合う 国際情勢 日本の北に出来た「オーリア大陸」(大きさ、面積共にオーストラリアと同程度)では エルブ国(バッサン、ライバーの傀儡であったが自力で独立)を挟み バッサン帝国(東に位置する人間主体の魔物排除主義)と ライバー連合(西に位置する魔物連合)が冷戦していた 日本の出現とバッサン軍襲撃失敗によって均衡が破られつつあり第三次大戦だひゃっほう! エルブ国 大国に挟まれた都市国家 人口100万人を超える大都市 陸路と海路の要衝(重要度はパナマのようなもの) 国家元首は黒エルフのガンダルヴ 鉾と銀の葉商工会長である 両大国の政治干渉により疲弊している(そこはかとなく中東っぽい、革命で独立) 政治干渉によりはっきりとした自衛力は保持していない 軍備制限有り ドワーフ主体の金属加工と黒エルフ主体の薬品、金融がさかん 金持ち 食文化は西と東が混ざり合い東西の食物を食べる、エルフ文化の影響で米食(日本と食生活は似ている) 鉾と銀の葉旅団は高品質のドワーフ製品を不当に安く買い叩かれるのに対抗 しようとした組織が前身で商売と金融に強い黒エルフが組織している ドワーフ製品(特に武器関連)を販売し、世界各地で武器を売る 武器をばら撒く闇商人とバッサンから非難を受けている(イ○クと思いねぇ) 大量破壊兵器の不法所持で濡れ衣を着せられバッサンの侵攻で占領されていた時期がある 黒エルフは殆どが女性、長寿族、耳長銀髪で肌は黄色~黒と幅広い ドワーフは男女が揃い、背は小さい、手先が器用で技術担当 地理的な特性上亜人が多い 陸上自衛隊 鈴木亮・・・・・・陸自の一尉、弾薬課、後に昇進 大西さん・・・・・鈴木の同僚 杉谷・・・・・・・鈴木の同僚 慎吾・・・・・・・陸曹、倉庫番 金田・・・・・・・普通科、アウム(現オーレフ)サリン事件にも出動したベテラン隊員 武雄さん・・・・・需品科 特殊作戦郡 赤沢・・・・・・・あだ名はレッド、赤沢レッドと呼ぶと殴られます 工藤・・・・・・・真面目な隊員、通信担当 半田・・・・・・・口調がリア十、分隊では新人(それでもベテランではある) 及川・・・・・・・半田の世話役、いつも貧乏籤 航空自衛隊 山下・・・・・・・竹島戦の観測要員 川田・・・・・・・竹島戦の観測要員 各省庁など 田中茂人・・・・・外務省所属の偉い人、幅の広いギーグ、5ヶ国語+αを話せる、 ファンタジーに詳しい、ロリコンかもしれない、侮れない人脈を持つ 実家が大富豪の坊ちゃん、鈴木とは幼馴染である 国会議員 『与党』 武原秀雄・・・・・内閣総理大臣、めかぶの昆布茶をこよなく愛する 原・・・・・・・・総理秘書、苦労人 浜口・・・・・・・防衛大臣 国木田・・・・・・外務大臣、激務で若干ノイローゼ気味 民心党『野党』 中谷・・・・・・・エネルギー庁長官、民心党の議員 飯石三副・・・・・予算委員会で漢字読み間違いについてかみついたアホな人物 独島水歩・・・・・竹島戦での自衛隊未介入に反対した人 矢鴨常春・・・・・自衛隊派遣は憲法9条に反するといった人 国会中に鶴を折った 広大党『与党である自心党と連立関係にある、党間関係は悪い』 永年与党を自称する 心明党『永年野党』 太品代表・・・・・心明党首 マスコミ 長井・・・・・・・総理付き記者で新人 総理との仲は悪かったが独占スクープで関係修復 長谷川・・・・・・法華井道新聞記者(ほっけいどう) 糸田河・・・・・・夕日新聞記者 エルブ商国 アカイ=マル=ポーロ・・・・・エルブ商工会の大幹部 みためろりぃな11歳中身33歳の少女 アン、メイ=ドゥ、トロワ・・・マルの御付だったメイド達、 1,2,3と数えてはいけない、爆死してミンチになる デ=キッコ=ナイサ・・・・・・エルブ国が攻められ、占領される前に首領だった人、処刑 トリック=メイス・・・・・・・元赤帽子隊大佐、彼女の脳筋ぶりはシュワちゃんに近い ベネット・・・・・・・・・・・元赤帽子隊大尉、下僕っぽい三下臭が漂う リアス・・・・・・・・・・・・元エルブ国執政官、大統領を自称しクーデターを狙う ゲド・・・・・・・・・・・・・技術屋ドワーフ、梃子摺っている人に手を貸すのが趣味、尻は貸さない ミゼット・・・・・・・・・・・対外交渉部所属 ブルータス・・・・・・・・・・赤沢により逮捕される バッサン帝国(王国) ビル=ランゲルハンス将軍・・・バッサン帝国政治将校 遠征軍を牛耳っていた ヒップのU とある人物A氏・・・・・・・・司令部所属 彼の部下 ランゲルハンスを良く思っていない シャルル・・・・・・・・・・・A氏部下 船上甲板で頭を狙撃され死亡、スイカ頭になる ヴォルギン千人長・・・・・・・A氏部下 船上甲板で対戦車火気に吹き飛ばされハンバーグになる その他 黒桐中人・・・・・・・・・・・怪しい研究主任 女性 呼称表記の注意 エイジア大陸・・・・・・・・・オーリアの西にある大陸、まだ詳しく書いてない アビア湾(日本海)・・・・・・彼らの世界で言う日本がある地域の海 ランゲルハンス島(竹島)・・・島を発見したランゲルハンス氏が命名 時系列順の話(修正) 1~3まで・・・・・・・・・・とある人達の戦闘記録『武原秀雄回顧録』『南方見聞録』 4、5・・・・・・・・・・・・とあるドワーフの日記 5・・・・・・・・・・・・・・とある人達の戦闘記録(改訂後) 6・・・・・・・・・・・・・・とあるドワーフの日記の(赤沢2等陸曹回想録)←今ここ 遥か未来・・・・・・・・・・・NHKにんげんドキュメント・補給仕官と向き合う
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/129.html
規制でスレに書けないときなどに使ってください。 livedoorのwikiに移動しませんか?そこならログインしなくても手軽に更新できます。 -- qq (2010-02-04 04 18 39) ここだってクッキーを食べるように設定しておけば、ログインしなくても誰でも更新できるよ? で、誰か過去ログを載せてください……。 -- 名無しさん (2010-02-07 10 13 01) 管理者の承認が必要みたいなんだけど・・・ -- qq (2010-02-12 05 49 56) と思ったら、編集できるのか。すまん。 -- qq (2010-02-12 05 52 08) 更新履歴ってどこにあるんですか? -- ウィキ童貞 (2010-02-13 01 04 05) 右下にない? -- qq (2010-02-13 01 29 14) 編集履歴のことなら、上の「表示」をクリック。 -- qq (2010-02-13 01 35 33) どうやら携帯だとダメみたいです、ありがとう御座いました。 -- ウィキ童貞 (2010-02-13 03 56 05) 平成日本召喚と第三帝国召喚を途中まで掲載しました -- qq (2010-02-27 01 14 32) しばらく見ないうちに分家の作品まで転載されてたので、wikiの名前を変えました -- 管理人 (2010-03-11 00 40 16) <第二次メクレンブルク事変>編11 追加 -- qq (2010-03-19 02 33 26) 分家版のSSスレの作品を収録。作者さん戻ってこないかなあ・・・ -- qq (2010-03-28 01 49 08) バカな編集の仕方してる奴がいるなと思ったら、作品の追加の説明文消したのか。もう好きにすればいいよ…。 -- 管理人 (2010-03-29 12 10 21) 「作品の追加の説明文」?そんなのあったか?あれば最初からそれにしたがってるよ。 -- qq (2010-03-29 17 27 48) http //www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/138.htmlみたいにやろうとしたら上手くいかなかったから、仕方なく自分なりにやってきたんだけどね。 -- qq (2010-03-29 17 29 25) ↑↑↑の管理人、偽物じゃね。本物だとしたら、wiki(に限らないけど)の管理人に適正ない。人格的に。 -- A (2010-03-29 21 35 45) なんというか見事に更新なくなったなぁ -- あ (2010-04-10 23 28 03) 小国の苦悩の一話と二話が同じだ -- 名無しさん (2010-08-05 03 31 24) リンク修正 閉鎖されたサイトを下の方に移動、新規にサイトを追加。 -- qq (2010-08-08 18 41 55) 皇国召喚 ~壬午の大転移~のページ編集でミスった。今メンバー承認待ちです。 -- 新参 (2011-01-30 01 34 26) メンバー承認どうもです。解決しました。 -- 新参 (2011-01-30 13 37 15) [星がはためく時]の削除という単語を付けられている記事は消して良いのでしょうか? -- 新参 (2011-10-10 18 47 29) いいよ -- qq (2011-10-23 22 39 26) 作者別まとめの被召喚側の欄で「空軍」というのがあって「旧日本空軍」となってますが、 -- 10-0 (2011-11-28 02 42 04) すいません、間違って途中で投稿してしまいました。で、旧軍には確か独立した空軍は無かったと思うのですが?旧日本軍航空隊とした方がより史実には即してるかと。 -- 10-0 (2011-11-28 02 44 34) 朱き帝國第16話 の「國」を「国」と表示されてしまっている為か、まとめに追加されていないね -- 名無しさん (2012-03-27 00 03 50) まだメンバー登録待ちなんで誰かお願いします -- 名無しさん (2012-03-27 13 10 54) まとめの228にある、場所のわからない1部って、別のまとめサイトのpixus.iinaa.net/jfs.htmの作者別まとめ>227氏の"1"では? -- 七言語 (2013-06-19 01 20 37) 島戦争更新再開してたうおおおおおお -- 名無しさん (2013-07-03 23 49 42) やはり、原題の国3つの同時召喚物(例:日本+ブラジル+カナダ)って難しいんでしょうか。 -- M・T (2013-12-14 16 49 36) 描写的に色々とややこしいと思うし、何よりブラジルはともかく、カナダにはフランスの血が流れていることを忘れない方が良いよ。 -- ジムタンク (2013-12-17 23 38 23) 誰でも良いのでコメント欲しいのですが、第二次世界大戦を平等な形で講和を迎えた大日本帝国が、日本帝国と名前を改めて皇紀2670年代(西暦2010年代)に異世界に転移するネタはダメかな? 異世界の敵国はめちゃめちゃ強くて日本が苦戦する予定。 -- ジムタンク (2013-12-17 23 42 28) 良いと思うよ。 -- 名無しさん (2013-12-18 19 19 17) 大日本帝国が、日本帝国 -- 名無しさん (2013-12-20 22 49 55) 途中送信ごめん。正直、大日本が日本に変わったところでなんも変わらん件について。かつて中華文明の影響もあって、独立国はその国名に「大」をつける習わしがあって大日本帝国の大日本はその流れなのよ……だから、ぶっちゃけ帝国の時点で変わらんと思う -- 名無しさん (2013-12-20 22 51 26) 大日本帝国占領下のF世界の話って書いて大丈夫ですか。てかそもそもスレたてにルールあったりします? -- 名無しさん (2014-01-14 00 03 50) ↑話を書くのは問題ないと思うよスレたては本スレで聞いて -- 名無しさん (2014-01-16 18 28 29) コメント欄なかったからここに書くけどヨークタウンさんの「星がはためく時」の世界の敵駆逐艦って水雷艇いないのに何を駆逐するつもりで造ったのだろうか? -- 名無しさん (2014-06-19 22 47 23) ワイバーンいるから航空攻撃に備えるためとか、いないと頭数がそろわず巡洋艦が袋にされるとか、非武装の相手に臨検するには最適とか理由はいくらでも出てきそうだけれども -- 名無しさん (2014-06-23 12 44 15) ↑*2だが、なるほど、それは思い浮かばなかった、ありがとう。 -- 名無しさん (2014-06-23 16 34 04) スレで散々言われてるのに「異空人/イクウビト(仮/25」を改変してる奴、これ以上続けるなら作者を執拗に責めて創作意欲を削ぐ輩と認識せざるを得ないわけだが。 -- 名無しさん (2014-07-15 20 15 16) SS「星がはためくとき」のページで「346 第259話 北大陸からの奇怪文」と「 外伝72」の削除をお願いします。ページが重複しています。 -- 名無しさん (2014-09-27 15 21 13) 本スレッド82章がhttp //hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1411893556/にアドレスが変更されました。リンクの修正お願いします。 -- 名無しさん (2014-10-13 21 31 32) suimasenn, -- 名無しさん (2015-09-05 21 46 52) すいません、「短編『突撃一番』あとがきと補足」を書いたのですが、@wikiモードにしてしまい、書き込みの一部がタグと認識されてしまったので、ログインできる方がいたらそのままテキストモードに変更をお願いします。うっかりやらかしましたorz -- 名無しさん (2015-09-05 21 52 33) ↑ -- 名無しさん (2015-09-06 00 10 07) テキストモードに変えました…と言いたいけどモード変更できる権限のあるログインじゃなかったorzので一度消してテキストモードに直しました。 -- 名無しさん (2015-09-06 00 08 39) すいません、「外伝的掌編『エレーナ殿下の御訪問』あとがきと補足」の方もテキストモードに…追加しようとしたら追加部分に安価があるのでタグ扱いされてしまいそうです -- 名無しさん (2015-09-06 08 16 07) ↑変えました。 -- 名無しさん (2015-09-07 01 14 04) 小説家になろうで現代ロシアの異世界転移物を書いている物なのですがこちらに掲載するにはどこに投稿すればいいでしょうか? -- 名無しさん (2016-09-04 00 43 21) ↑よく知らないけれど、なろうって他所のサイトへの転載OKなのか? なろうにm投稿しているのにこっちに投稿する意味あんのか? -- 名無しさん (2016-09-06 01 53 32) ↑☓2 ロシア異世界転移物って「露西亜連邦異世界転移記」の事? あと貴方は作者本人なの? どういう意図で転載したいさ -- 名無しさん (2016-09-06 02 03 11) 作者本人なら自分の責任でやってみれば?と思う -- 名無しさん (2016-09-08 14 42 41) ↑こっちのほうが詳しい人多そうなのでアドバイスいただけると思いまして -- 名無しさん (2016-09-13 12 27 19) ↑マニュアルには重複掲載は可とあります -- 名無しさん (2016-09-13 12 29 28) ここのUIクソすぎない?次話へのリンクもないとか酷すぎるだろう。 -- 名無しさん (2016-10-22 13 50 14) 本スレじゃないけど、AAで日本転移物やってる人いるね。リンク貼る? -- 名無しさん (2017-02-16 14 48 05) 俺は欲しい -- 名無しさん (2017-02-16 20 05 24) やる夫シェルターの【安価・あんこ】日本は異世界に転移したようです のこと? -- 名無しさん (2017-02-17 00 39 25) 118章はどこ? -- 名無しさん (2017-05-31 15 48 00) 自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた第119章 [無断転載禁止] #169;2ch.net http //hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1496336814/ -- 名無しさん (2017-06-02 02 09 53) なかったんで建ててきた。重複してたらすまん -- 名無しさん (2017-06-02 02 10 21) 荒らしがひどすぎて正直2chの本スレでの投稿は無理だわ。 -- 名無しさん (2017-06-14 01 51 16) ここ今どうなってんの? -- 名無しさん (2018-05-23 08 43 48) したらば、運営のエーゲート夜逃げ(現時点でエーゲートHP閉鎖、FB垢削除)により消滅が濃厚のようです…。 -- 名無しさん (2019-11-03 20 58 45) 唯一更新続いてる”星がはためく時””皇国召喚””日本異世界世紀末”の作者様の対応をこういった場でいいから申し上げてくださいとしかいいようがないね。 -- 名無しさん (2019-11-03 23 09 53) 名前 コメント
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第181話 アメリカ本土激震 1484年10月7日 午後6時 シホールアンル帝国ウェルバンル この日、首都の帝国宮殿内では、とあるイベントが催されていた。 宮殿の1階の大広間は、200以上もの席が用意され、そこに座っている客人達が、目の前に広げられた白布に映し出された モノに釘付けとなっている。 真っ平らな形をした船が、船体上から爆炎を噴き上げ、しまいには黒煙を吐き出して洋上をのたうつ。 場面が変わり、同じ船を別の角度から捉えた形で映し出される。 船の舷側に複数の水柱が立ち上がった。やがて、その船は姿勢を傾けながら、徐々に速度を緩めて行く。 観客席の真ん中で、シホールアンル帝国皇帝オールフェス・リリスレイは、愉快気な表情を浮かべながら、その映像を見ていた。 「いやあ、皇帝陛下。映画という物は良い物ですなぁ。」 後ろに座っていた国外相のグルレント・フレルが、オールフェスに言う。 「だな。幽霊部隊に、映像を記録できる魔道映写機を送り込んだ甲斐があったぜ。」 オールフェスは自慢気に返した。 今、目の前で流れているのは、先のシェルフィクル沖海戦(米側呼称レビリンイクル沖海戦)の際に取られた映像を基に作った記録映画である。 オールフェスは、8月に映像を記録できる魔道映写機を、各部隊に20個ほど送り付けた。 海戦終了後、軍は生き残った魔道映写機を集め、国内省宣伝部の協力を得て、この記録映画作り上げた。 記録映画は、既に4日前から帝国各地が上映され、国民は、銀幕上の無敵帝国軍の雄姿に感動した。 「陛下。国民の間では、このような大勝利を上げたにも拘らず、対話への道を取ろうとする我々の方針に少なからず不満の声が聞かれるようですが。」 左隣に座っていたジェクラが、オールフェスに言う。 「不満か……まっ、否定的な意見が出るのは最もだな。」 オールフェスは苦笑する。 「普通なら、俺達は猛反撃して相手を追い詰めているからな。でも、今回ばかりはそうもいかねえよ。」 彼は首を竦めた。 「そんな事をしたら、逆にこっちが危ない。俺達は、まだアメリカという国をまだ知らない。あいつらが何で、あんな非常識じみた国力を 持つのか徹底的に調べる必要がある。いや、国力だけじゃない、何から何まで、全て調べなくちゃいけない。だから、ここは一度、剣を収めて、 休む必要がある。」 「なるほど。だから、あのような案を送り付けたのですな。」 「そうさ。」 オールフェスは、悪童が浮かべるような笑みを見せる。 「今頃、アメリカや南大陸の連中は揉めているだろうな。あの、2通の講和文で。」 彼は、愉しげな口ぶりで言う。オールフェスは、心の底から今の状況を楽しんでいた。 講和文の作成が始まったのは、海戦が終わった翌日の9月20日からだ。 帝国中枢の閣僚達は、最初こそはオールフェスの言う講和に反対していたが、国力が敵対国アメリカに及ばぬ事と、現状のまま交戦を 続けていれば、いずれは帝国本土のより奥深くにまで戦火が及ぶという事実を受け止め、最終的には全閣僚が一致して講和に賛成した。 シェルフィクル沖海戦の勝利は、21日に公式発表が行われ、その報せは帝国中を駆け巡った。 久方ぶりの大勝利に、国民は狂喜した。 国民の中には、このままの勢いで再び、南大陸へ突き進め!と高々と叫ぶ者も多数居た。 海戦の勝利の報は、前線で戦う将兵の士気にも影響し、9月23日に、ジャスオ領北東部で起きた地方都市を巡る攻防戦では、 シホールアンル陸軍の部隊が、侵攻して来た米軍部隊に猛烈な反撃を行い、翌24日には米軍を追い返した。 翌26日には、ジャスオ領の別の地域で作戦中であったカレアント軍が、側面をシホールアンル軍石甲部隊を突破され、丸半日間 包囲されるという事態も起きている。 10月を迎えた現在でも、ジャスオ領では依然として、連合軍が攻勢を行い、シホールアンル側が防御を行うという状況が続いており、 連合軍はジャスオ領の首都まで、あと10ゼルドという距離まで迫っている。 しかし、戦線全体では依然として激戦が続いており、ここ2週間程、連合軍の進撃は遅々として進まなかった。 オールフェスは、戦線が膠着状態にある今こそ、講和を申し込むべきと確信し、9月28日に、最初の講和案を連合国に送り付けたのである。 そして、彼はその4日後に、第2案を送る事を命じた。 彼は、第1案と第2案を送る事で、帝国内で大きな変化があったと、連合国に錯覚させようとしていた。 彼の狙いは図に当たり、アメリカを除く連合国側は、シホールアンル帝国内で何らかの政変があったのではないか?と、議論を行っている。 今の所、状況はオールフェスの望んだ通りに進みつつある。 しかし、 (でも、やはり不安は残るな) 彼の内心には、常にアメリカの事が気がかりであった。 あのスパイ情報を丸ごと利用したお陰で、アメリカ機動部隊をまんまと吊上げ、大損害を与える事に成功した。 だが、オールフェスとしては、海戦の結果はやや不満に思った。 彼は、アメリカ機動部隊を文字通り全滅させるか、それがかなわぬまでも、せめて全ての空母を沈めるか、あるいは大破同然にして しばらくはドック送りにしてやる事を望んでいた。 あの海戦で、味方のワイバーン隊や航空隊は、総計で600騎以上の損害を出し、貴重な正規竜母を1隻失うと言う手痛い被害を被った物の、 幽霊部隊を含む陸海軍の航空隊は、正規空母3隻、小型空母2隻、戦艦1隻、巡洋艦、駆逐艦15隻を撃沈し、空母3隻と戦艦1隻、 巡洋艦5隻、駆逐艦6隻を大破させ、その2日後に、レンフェラルが駆逐艦2隻を撃沈し、正規空母1隻と小型空母1隻を損傷させた。 味方は痛い損害を受けた物の、戦果は充分過ぎる程の物がある。 撃沈した空母の中には、アメリカ軍自慢のエセックス級新鋭空母も含まれている他、長年、シホールアンル海軍を悩ませて来たレキシントン級 空母のサラトガも含まれている。 それに加え、サウスダコタ級戦艦を沈没に追いやった事に関しても、海軍上層部は狂喜し、後の広報紙では、 「アメリカはレアルタ島沖海戦で、戦艦が航空戦力にかなわぬ事を実証したが、先のレビリンイクル沖海戦では、我々が敵の戦艦を沈めた 事によって、航空戦力の前に、戦艦は太刀打ち出来ぬと言う事を、改めて、世に知らしめた。我がシホールアンルは、このチャンスを作った アメリカ海軍に感謝すべきである。」 という、皮肉まじりの文が掲載された程である。 オールフェスも、宿敵であるアメリカ機動部隊を壊滅同然に追い込んだ事を素直に喜び、海戦の勝利が届けられた時には、 「馬鹿が餌に引っ掛かりやがった。」 と、声高に叫んでいた。 だが、日が進んでいくに連れて、オールフェスは大勝利の熱を感じなくなって来た。 確かに、来寇して来た米機動部隊を袋叩きにして追い返す事が出来た。 だが、今の所は“それだけ”である。 シェルフィクルにやって来た米機動部隊は、正規空母、軽空母合わせて、12隻を有する大機動部隊であり、シホールアンル海軍の 主力と互角に戦える戦力だ。 敵機動部隊は、普通ならば、大艦隊の域に達する規模であったが、あれでも、アメリカ太平洋艦隊の片割れ、簡単に言えば “分力”に過ぎないのだ。 全力で持って、敵の分力を叩くというオールフェスの考えは、見事に当たったが、それでも、アメリカはあのような機動部隊を、 ほかに後2つは持っている。 もし、講和の申し入れを拒否した場合、アメリカは早々とレーフェイル戦線にケリを付け、残った戦力を総動員して全力で攻めてくるだろう。 オールフェスが思い描いていた理想を阻んだアメリカ。 シホールアンル帝国が存続するか、または滅ぶか。その鍵は、実質的にアメリカが握っているも同然であった。 (いや、講和は絶対に受け入れられる。) オールフェスはそう思う事で、不安を打ち消そうとする。 だが、心の中のわだかまりは、なかなか消えてくれそうになかった。 「……ところで」 オールフェスは、さり気ない口ぶりでジェクラに声を掛けた。 「君が自慢している部下はどうした?今日は風邪か何かで休みかな?」 「ああ、彼女ですか。」 ジェクラは困ったような顔つきを浮かべた。 「今日は別の都合で来れない、と言っておりましたな。」 「へえ、珍しいね。あの大の連合国嫌いが。彼女なら、この記録映画に感動して涙を流さないかと思ったんだけどなぁ。」 オールフェスは言葉を発しながら、ジェクラ自慢の官僚の顔を思い出した。 顔立ちは、傍目から見れば中性的だが、よく見ると童顔で愛らしい感がある。 肌は浅黒く、黒髪のショートヘアで、誰が見ても目を引き付けそうな美貌をもっている。 年は35歳だが、外見的には若く、スタイルも良いため、20代中頃で通してもあっさりと騙されるという。 体を鍛えるために、時折、首都近郊を走ったり、知り合いから格闘術を習っていると聞いた事があり、リリスティも2度ほど、 外で見かけた事があると言っている。 その女性官僚の名はフィシス・フェデイランドといい、国内相では被占領国事情担当補佐官というポストについている。 国内相には、その長であるジェクラを補佐する為の高級官僚が何人か居る。 その中の1人が、フェデイランドであり、彼女は国内相でも屈指の対連合国強硬派としても知られている。 今回の講和で、幾人もの反対者が現れたが、フェデイランド補佐官もその1人であった。 彼女は、国内相内での講和反対派の急先鋒であり、講和文が送られる前日まで、賛同者と共にジェクラの執務室に押し掛け、 声高に講和反対を叫んでいた。 講和反対を唱える者は、国内相だけに限った話では無く、各省庁でも多数の人間が講和に反対していた。 内需相では、一部の反対論者が執務室内に内需大臣を閉じ込めるという事件が起きたほどである。 とはいえ、曲がりなりにも講和の申し込みは終わり、各省庁とも落ち着きを見せ始めていた。 そんな時に、この記録映画の上映会は開かれた。 上映会には多数の来賓が招かれ、誰もが迫力満点の映像の数々に驚き、そして楽しんでいる。 そのイベントに食い付きそうな人物が、運悪く出られなくなったと言うのだ。 「まっ、彼女は頑張り過ぎていましたからな。ここらで無理させる必要もあるまいと思いまして……まぁ、私としてはいささか、 寂しい物がありますが。」 「ハハハ。仕方ないさ。今は、俺達だけで楽しもうじゃないか。」 オールフェスはそう言ってから、意味ありげな笑みを浮かべた。 ジェクラもそれを理解し、再び映画鑑賞を楽しむ事にした。 シホールアンル帝国の首都、ウェルバンルは、他の都市と同様、明もあれば暗もある。 市街地の中心から離れた古ぼけた家屋群等がそうである。 日が落ち、秋の冷たい空気に覆われた町の裏道で、1人の女性が息を切らせながら走っていた。 「はっ……はっ……はっ……」 彼女の姿は、誰が見ても慌ただしく感じる。 上半身に付けている白い開襟シャツは所々に皺がより、汚れている。 ボタンは中途半端な所で外れており、開かれた部分から胸元や腹部の辺りが見える。 下半身を覆うズボンも、同様に皺が寄り、一見だらしなく感じられる。 だが、そんな事を気にする余裕は、彼女には無かった。 (く……何故…!) 彼女は、心中で呟く。その時、不意に背筋に冷たい物が走った。 咄嗟に姿勢を低くする。 体勢が下がった直後、頭のすぐ上を2本のナイフが飛び過ぎて行く。 咄嗟にナイフを取り出し、いつの間にか右側方から迫って来た敵の攻撃を受け流す。 相手は、しなやかな動きで右手のナイフを突き出す。攻撃の1つ1つが素早く、頭や首、腹といった急所を躊躇い無く狙って来る。 しかし、彼女はその動きに追い付き、ナイフの刃でそれを止めるか、あるいは軌道を逸らしてナイフの方向をあさっての方角に突き出させる。 彼女は、黒づくめの横顔に回し蹴りを放ったが、相手も咄嗟に後ろに体を反らせ、蹴りを空振りにさせた。 その勢いを活かして、そのまま後ろに回転した黒づくめの敵は、彼女からやや離れた位置に着地し、屈んだ姿勢で彼女を見据えた。 「ふふ……格闘マニアにしては、なかなか良い動きですね。フィシス・フェデラインド補佐官。」 黒づくめの敵は、不敵な笑みを浮かべながら、彼女に言う。 「いや……南大陸から紛れ込んで来たコソ泥、といった方が正しいかしら?」 「く……黙れ!」 彼女…フィシス・フェデラインドは、憎らしげに顔を歪めながら叫ぶ。 同時に、後ろから予備のナイフを1本取り出し、目に留まらぬ速さで投擲する。 常人ならば、対処しきれないほどの早さだ。 しかし、黒づくめの敵はいとも簡単にかわした。 「おっと、危ないですねえ。」 黒づくめの敵は、自分の長い髪に触れながら、フィシスを嘲笑する。 「もう、何をやっても無駄ですよ。ここは諦めて、大人しく死んで貰って良いですよ?」 「ふ、馬鹿な事をぬかすな!」 フィシスは相手に威嚇するように叫びながら、鮮やかな勢いで間合いを詰める。 この黒づくめの敵に追われてから30分以上が経っている。 彼女は右腕や足に切り傷を負っているが、長年の鍛錬の賜物なのか、その動作は無駄が無い。 「う、うわ!」 敵は慌てながらも、咄嗟に右へ飛び跳ねた。 フィシスがそれを追い、ナイフを突きだす。相手も必死にナイフを振り回して、フィシスの攻撃を食い止める。 刃と刃が絶え間なくぶつかり合い、暗闇に火花が飛び散る。 今度は、フィシスが相手を押し始めていた。 「ちょ、ちょっと待って!」 「フフフ、形勢逆転だね。」 攻守が入れ替わった事で、彼女はこのままなら勝てると確信した。 相手もかなり腕が経つが、バルランド本国で、何度も修羅場を潜り抜けた彼女から見れば、いま一つに思える。 「ここで死ぬのは、お前だ!!」 フィシスは叫ぶと同時に、重い一撃を繰り出す。自らが愛用しているナイフが相手のナイフに当たり、根元から叩き折れる。 「あっ!?」 黒づくめの女がはっとなる。そのまま、首筋をナイフの刃で薙ごうとした時、唐突に顔が下から蹴りあげられた。 鈍い衝撃と共に、視界が宙を向く。 「ぐ…ふ!?」 フィシスは痛みを堪えて、前方を見た。しかし、 相手の姿は消えていた。 「……え?」 彼女が間の抜けた声を漏らした瞬間、腹部に何かがぶつかり、体がくの字に折り曲げられた。 腹が圧迫された事により、彼女は一瞬、息が詰まった。 2秒ほど間を置いて、彼女は大きくせき込んだ。 その際、フィシスは口から熱い物を吐き出した。地面に何かの液体が滴り落ちる。 「ぐ…う…」 「言ったでしょ?待ってくれって。」 黒づくめの女は、先とは違った冷たい声音で言う。フィシスはふと、相手の拳が、自分の腹に不覚食い込んでいる事に気が付いた。 「ふぅ、やっと大人しくなったね。でも、まだ死なせないよ?」 女は、腹の辺り押し当てている拳を、やや上に引き上げる。その瞬間、激烈な痛みがフィシスの全身を貫いた。 「……!」 あまりの激痛に、彼女は体をのけ反らせた。相手は、腹を思い切り殴ったのではなく、持っていたナイフを勢い良く突き刺したのである。 「ふふ、どう?」 女は冷ややかな笑みを浮かべると、フィシスを壁の前まで押しやる。 「しかし、あなたもこれまでね。」 「く…そ……」 フィシスは痛みに苛まれながらも、相手を睨みつける。 「あら、そんな口汚い事言ったらだめですよ?おばさん。」 女はそう言ってから、腹に突き刺していたナイフを更に押し上げる。 「やはり、痛いよね?でも、安心して、痛いのは生きている証拠だから。」 女は、歌うような口ぶりで言いながら、またもやナイフを引き上げる。 腹に刺されたナイフは、体の中の内臓を1つ、また1つと縦に切り裂いていき、刃先は腹の真ん中から鳩尾まで、止まる事無く進んだ。 「さっき、あなたは何て言ったかな?あたしに、ここで死ねっていったわね?」 「か……は…」 女の問いに、フィシスは答えきれない。口の両端からは血が流れ落ち、顔は地獄のような痛みに歪んでいる。 女は更に、ナイフを押し上げ、刃先が胸の真下にまで近付いてきた。 「でも、残念ね。おばさんは、あたしより動きが鈍いんだもん。それに、頭も悪いし。とにかく、あなたはここで終わりね。」 女は、不気味な笑みを浮かべつつ、またもやナイフを押し上げる。 「8年間、ご苦労様でした。」 女はそう言ってから、ナイフを一気に引き上げた。 フィシスは、最後に自らの心臓が真っ二つに切裂かれた感触を感じた後、意識を暗転させた。 それから2分ほど経つと、女のすぐ側に、やや年の行った男が地下付いて来た。 「終わったようだな。」 男は、機械のような冷たい声で女に言った。 「ええ。」 女。もとい、シホールアンル陸軍第9特殊戦技旅団に属する、ウィーニ・エペライト軍曹は、ただ一言だけ答えた。 「それにしても、魔法を使わずに目標を殺るとはね。貴様も腕を上げたな。」 「少佐。こんな人に、魔法を使うまでもありませんでしたよ。」 「ふむ。つまり、弱かったという訳か。」 「はい。前線の兵に比べれば、私がやる事は簡単な仕事ですよ。」 エペライト軍曹は、少佐に返しながら前線の光景を思い浮かべる。 彼女は、前線から帰って来た先輩から、本物の戦闘がどれほど過酷か、嫌というほど聞かされている。 前線では、将兵は猛烈な銃砲弾幕を掻い潜りながら、日々任務に当たっている。 時には、敵航空機の大編隊に襲われ、場所によっては、執拗な艦砲射撃を受ける事もある。 それに比べて、自分の任務は一体何だろうか? 航空機に襲われる事も無ければ、沖合の巨大戦艦に砲弾をぶち込まれる事も無い。 銃撃に怯える事すら、この首都ではまずあり得ない事だ。 前線で奮闘する味方部隊の事を思えば、自分達の任務は恐ろしく簡単な物に思えた。 「……しかし、何とも味な殺し方をする。相手はさぞかし、お前を恨んだろうな。さて、死体を片づける事にしようか。」 少佐と呼ばれた男は、右手を上げた。すると、どこからともなく、数人の黒づくめが現れた。 黒づくめ達は、フィシスの死体を死体袋に入れ、代わりに別の死体をその場に放置する。 「彼女は、明日、自宅で数人の男に殺された事になる。だから、死体をここに放置しておくわけにはいかん。」 「この死体は?」 「ああ、これは別の目標の死体だ。こいつは道端で通り魔に殺された、となる予定だ。とにかく、今まで本当に御苦労だった。」 少佐は、彼女の肩をポンと叩いた。 「君が、あのスパイの魔法通信を傍受していなければ、我が国は今回のように、連合国に対して講和を持ちかける事は出来なかった。」 「私は、帝国軍人として義務を果たしたまでです。」 「…まっ、明日からはしばらく休暇を取るが良い。」 少佐はそう言うなり、彼女の側から離れた。 オールフェスが考えた米機動部隊を潰すための作戦は、彼女から送られて来る情報を基に作られていた。 もともと、ウィーニはシホールアンル帝国の国民ではなく、ヒーレリ領の人間であった。 彼女は6歳の頃に、シホールアンル帝国領内の軍事施設に連れて行かれ、14歳までに過酷な訓練を受けさせられた。 その訓練の最中、彼女は魔法通信を傍受出来る特殊技能を身に付け、軍に入隊してからはこの能力をふんだんに使い、幾つもの秘密作戦を成功させて来た。 現在、彼女のように、魔法通信を傍受出来る魔法を使えるのは、まだ居ない。 もし講和が成立すれば、シホールアンルはウィーニの活躍によって平和を取り戻した事になる。 シホールアンル帝国軍人として生きる事を決めた彼女にとって、この功績は限りなく大きな物である。 だが、不思議にも、ウィーニは自分が偉業を成し遂げたという実感が無かった。 1年にも渡る長い任務が、ようやく終わったという達成感がこみ上げて来るだけであった。 1484年(1944年)10月7日 午前7時 ワシントンDC アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトは、ホワイトハウス内の執務室から、窓越しに空を見上げていた。 「曇りか……ここ最近は、ずっとこのような天気ばかりが続く物だな。」 彼は、小さな声でそう呟くと、両足の上に置いていた新聞に視線を落とした。 ルーズベルトは、新聞に書かれている見出しを見つめる内に、不機嫌そうな表情を表す。 「シホールアンル帝国、平和的解決へ意欲を示す、か。まぁ確かに、あのような内容の講和文を送りつければ、こんな 反応も出て来るな。」 彼はそう言ってから、深くため息を吐いた。 窓ガラスが、外から吹き付けて来た風を受けてカタカタと音を立てる。 ルーズベルトは、そのカタカタという音が、混乱に見舞われているアメリカという国を嘲笑しているようにも聞こえた。 ニューヨークタイムスや、ワシントンポスト紙等の新聞社が、シホールアンル帝国から講和があったという事を伝えたのは、 日付が10月1日に変わってからである。 全米の各紙は、政府から発表された講和の内容を全て報道し、国民の大多数は、シホールアンルが米国との対話を望んでいるという事を知った。 だが、アメリカ国民は、かの国が講和を望んでいる事を知っただけであり、全員が講和を結んでも良いと判断した訳では無かった。 ニューヨークタイムスが3日に行った世論調査では、回答者のうち約4割が講和を結んでも良いと答えている者の、残りの6割近くは、 決して講和を結んではならないと答えていた。 講和を結んでも良いと答えた者の言葉は、 「相手が矛を収めようと言っているのだから、こちらも相手に配慮して応じるべき」 「合衆国軍だけでも、30万以上の死傷者が出ている。シホールアンル側も同様に、大量の死傷者を出しているのだから、 これ以上の犠牲を避けるためには講和も止むなし。」 「シホールアンル軍も、この戦争で懲らしめられているから、もう戦争をしようとは思っていない。あの講和文がその証拠だ。」 というような物であった。 それに対して、講和に反対している者は、 「確かに相手が対話を求めて来たのは良いことだ。だが、あの内容は明らかにおかしい。こちら側が納得するような講和文を送らせるまで、 戦争は続けるべき。」 「シホールアンルやマオンドと講和を行っても、また近いうちに戦争を起こすという事は充分にあり得る。相手が完全に参ったと言うまでは、 この戦いは終わらせてはいけない。」 「例えアメリカが講和を結ぼうとしても、他の同盟国や協力者…特に、凄惨な占領政策を実施したマオンドの被害にあったレーフェイル大陸の 住民達は納得しない。マオンドやシホールアンルを潰せるは今のうちであるから、両国の首都に戦車を突っ込ませるまで、戦争は続けるべきだ。」 と、大多数が相手側の降伏か、あるいは、先の講和文を徹底的に覆させる事を望んでいた。 現状ではこのように、自国や連合国が完全に納得できる形で戦争を終える事を望む声が、戦争終結を望む声よりも多い。 だが、実質的に、国内の世論が二分された事に変わりは無かった。 とはいえ、戦争推進を望む声が多いこの状況ならば、なんとか戦争は継続出来るだろうと、ルーズベルトは3日前にそう確信していた。 しかし、彼の確信は、北大陸派遣軍司令部から送られて来た新たな電文によって脆くも崩れ去った。 10月4日。アメリカ政府は、シホールアンル側が送り付けて来たという、講和文の改定案を受け取ったが、その内容は、余りにも衝撃的であった。 内容は、以下の通りであった。 1.シホールアンル帝国並びにマオンド共和国は、連合国に対して講和を申し入れる準備がある。その際、両国は、先の戦争で受けた 被占領国に対してある程度の支援を行う。 2.両政府は、現在の状況でも停戦しても構わないと判断するも、状況如何によっては、現在占領している被占領国の解放も検討する。 3.両政府は、現政府が継続したままの状態での講和を望むが、2年後には大規模な国内改革を行う事を約束する。 4.両政府は、連合国と共同で、損害をもたらした被占領国に対して、人員を配置し、国家を独立するまで再生する事を約束する。 その際には、連合国側と共同で人員の指導、育成、技術援助を行う事を提案する。尚、国家再生後は、現地の軍に国の統治を任せ、 我が軍や連合軍は、現地から段階的に撤退する。 5.シホールアンル、マオンド両政府は、先の戦争での戦争犯罪人を裁く必要性があると感じ、それを行う事を約束するが、この件においては 連合国側も参加する事を強く望む。 6.両政府は、連合国に対し、双方で得た捕虜を交換する事を提案する。 7.戦争終結から5年以内に、両政府は連合国と和解し、平和条約を調印する事、また、両政府は、連合国と共に大規模な軍縮を行うと約束する。 8.本案を受け入れる際は、直接魔法通信で回答を送るか、同盟国経由で送る事を望む。講和申し込みを受諾した場合は、ジャスオ領にある 連合国側の拠点で交渉を行う。交渉を行う際、その期間中は休戦状態とする。尚、交渉場所の選定は連合国に一任する。 前回送られて来た内容と比べると、シホールアンル側の姿勢は、ほぼ180度転換している事がわかる。 前回の講和文は、確かに戦争の終結を意味する物であったが、その内容はマオンドやシホールアンルが有利になるような物であった。 だが、今回送られて来たこの講和文は、シホールアンル、マオンド陣営と、連合国側が真に対等になる事を強く望む物であり、 内容の中には、両国が行って来た非を認めるような文も見受けられた。 シホールアンル・マオンド側の豹変ぶりに、アメリカ政府の高官たちは誰もが度肝を抜かれた。 10月4日の緊急会議は、この改訂案をどう判断するかで揉めた。 閣僚の中の1人は、この講和文は無かった事にして、先の内容を非難する形の報道を繰り返してはどうか?と言った。 陸軍のマーシャル参謀総長もそれに同意して、ルーズベルトに決断を迫った。 確かに、10月4日の時点では、この改定案は全国に報道されていないため、国民は改訂前の、高飛車な内容の講和文しか知らない。 それを知っている閣僚や、マーシャルの考えは当然ともいえた。 だが、ルーズベルトは2人の提案に同意する事は出来なかった。 各新聞社には、確かにこの改訂案があるという事は知らされていない。 しかし、連合軍総司令部の周辺に張り付いている記者達は、連合軍司令部が何か新しい情報を受け取ったという事を、アイゼンハワー将軍や 各国の軍司令官(この時、インゲルテントは本国に呼び戻されていなかったという)知っており、記者達は将軍達が出て来る所を直接取材して、 何か伝えられた、という事を嗅ぎ取っていた。 とある新聞社は、まだ確信とも言える情報を掴んでいないにも関わらず、4日の夕刊で連合軍司令部は何らかの情報を掴んでいるが 隠蔽しようとしていると、厳しく非難し、それが反戦運動家達を煽りたてた。 ちなみに、この新聞社は先のレビリンイクル沖海戦関連の報道でも、不時着機のパイロットを全て見殺しにしたという記事を書いた曰く付きの新聞社である。 会議は朝から夕方まで続き、最終的にはこの講和文も公表する事になった。 10月5日、政府は講和の改訂案の内容を公式に発表し、それは新聞、ラジオを通じて全国民に伝わった。 それから翌日の6日、ニューヨークタイムスやワシントンポスト等の有力な新聞社は、一斉に世論調査を行った。 その結果は、翌日の新聞に掲載される事になったが、そこには驚くべき数字…ある意味では、当然ともいえる物があった。 ルーズベルトは時計に目を向けてから、もうすぐでやって来る人物の事を思い出した。 その時、ドアが開かれた。 「おはようございます、大統領閣下。」 「やあハリー。おはよう。」 ルーズベルトは、微笑みを浮かべながら入って来たハリー・ホプキンス補佐官に穏やかな声で挨拶を返した。 ホプキンスは、やや重い足取りでルーズベルトの執務机の前まで歩み寄る。 「大統領閣下……今日はいつもと比べて、お元気が無いようですが。」 「ああ。」 ホプキンスの問いに、ルーズベルトは頷きながら、机の上に新聞を置いた。 「少しばかり考え事をしていてね。ところでハリー、君は今日の新聞は見たかね?」 「はい。」 ホプキンスは一言答えてから、表情を暗くする。 「私の見解からすれば…国内世論は容易ならぬ事態になって来ましたな。」 「うむ。正直、私も頭が痛いよ。」 ルーズベルトは、深いため息を吐きながら言うと、新聞のある部分を、右手の人差指でトントンとつついた。 「見たまえ。これは今朝のワシントンポスト紙の朝刊だが、世論調査では講和に賛成が、回答者の約6割5分。反対が 3割ほどとなっている。ニューヨークタイムス紙でも同様だ。」 彼は左手で額を抑える。 「これは、一部の人に聞いただけに過ぎないが、それでも、戦争継続に異を唱える者が6割以上も居るとは…」 「国民は、あの講和文の内容を見て、シホールアンルとマオンドに対して満足出来る形で戦争を終わらせる事が出来る、 と判断しているのでしょう。正直申しまして、私自身、そう思いかねないほどの内容でしたからな。」 「ああ。本当、あの内容には私も驚いたよ。」 ルーズベルトは右手の人差し指を伸ばし、それを振りながら言葉を続ける。 「つい最近までは、強硬な姿勢を窺わせていたあのシホールアンルが、いきなり態度を軟化させるとは、予想が付いたかね?」 「いえ……全く。」 「だろう?私も、全く予想できなかったよ。今思えば……あの一見馬鹿げたような内容は、この改訂案を送るための布石だったと、 私は確信している。」 「要するに、シホールアンルは、我々に揺さぶりを掛けて来た、と言うのですね。」 「そうだ。」 ルーズベルトは深く頷いた。 「シホールアンルは、最初に自国が有利になる事しか考えていないと思わせるために、まず、第1案を送りつけて来た。 そして、間を置いて、まるで自分達が間違っていましたと言わんばかりに、あの第2案を送り付けた。そのお陰で、 国民はシホールアンルやマオンドが、自らの誤りを認めて、ようやく、本腰を入れて講和を結ぼうとしていると思い込んでしまったのだ。」 「……恐ろしい事です。」 ホプキンスは頭を振った。 「ただ、恫喝外交だけしか取り柄が無いと思い込んでいたのですが。」 「しかし、そうではなかった。」 ルーズベルトは、新聞紙を指先で小突きながら言う。 「実際は、外交もなかなか上手いという事が立証された。この国民の反応がその証拠だ。」 「大統領閣下。やはり、あの改訂案は公表すべきでは無かったのではありませんか?」 ホプキンスは、真剣な顔つきでルーズベルトに問う。 「ああ。発表するべきでは無かったな。正直言って、情報を握り潰したいと思った。」 ルーズベルトは、車椅子を旋回させて、執務机の後ろに体を向けた。 「だが…安易に情報を隠蔽すれば、既に何かが起きたと確信している記者達に不審に思われ、遅かれ早かれ、あの改訂案の事は 国民に教えなければならなかった。その場合、国民は戦争継続を止めよと言うだけでは無く、情報を意図的に隠蔽した政府をも 非難するだろう。」 「……嘘や隠し事は、暴露されれば信用を無くしますからな。」 「ああ。隠そうとしている物の存在が、相手に察知されている場合は尚更だ。人間は、例え、現実にある物でも、 それを見ない限り、隠蔽しても全く気付かない。だが、そのような物が存在し、それが一部の人間に察知された場合、 人はもしかして、それが存在するのではないか?と勘繰る。そして、隠蔽工作を続ければ、人の疑いはますます強くなり、 ついには限界点に達する。特に、今回のような、国家の行き先を左右するような情報は、決して隠蔽してはならない物だ。 事が大きくなればなるほど、隠蔽をした後の批判は強くなる。最悪の場合、嘘つきは政治家の始まりであると言われかねない。」 ルーズベルトはそう言いながらも、顔の憂色をより濃くしていく。 「もし、連合軍司令部に記者が居なければ、私はあの情報をしばらくは公開しないでも良いと判断したかもしれない。あれは明らかに、 我が国の…いや、アメリカのみならず、他の連合国の国策にも影響を及ぼす物だ。もし、私達が継戦すると言えば、連合国も立場上、 継戦を行うだろう。だが、アメリカが戦争をやめると言えば、連合国は否応なしに戦争を止めるしかない。」 「閣下……我々は、シホールアンル、マオンドの現政府が倒れるまで戦争を行うと、国民に約束し、国民もそれを理解した。その国民が、 連合国が最も危惧していた形での戦争終結を招いてしまうとは…」 「全く、とんでもない皮肉だよ。」 ルーズベルトは、自嘲気味にそう返した。 「民主主義とは、たった2枚の紙切れで揺らぐほど、脆い物なのだろうか…ハリー、私はつくづく疑問に思うよ。」 「………」 ホプキンスは何も言えなかった。 「この状況を打開するには、一体どうしたら良いのだろうか。」 ルーズベルトは、唸るような声で呟いた後、口を閉じる。 執務室は、静寂に包まれた。 外から吹き付ける風の音と、時計の針の音だけが、室内に響き渡っている。 ホプキンスは、もし講和を結んだら、今後はどうなるのか?と思った。 講和を結べば、一部の軍を残して、派遣部隊の大半は国に帰って来るだろう。 その後は、まず、戦争によって肥大化した軍を縮小する事になる。 軍は、新兵器の開発を急いでおり、陸軍では新型の超重爆撃機や、新鋭機、それに最新型の戦車が開発中であるが、 停戦となれば、これらの新兵器は開発が中止されるか、あるいは、少数のみが配備されるであろう。 海軍も恐らく同様であり、新鋭艦の建造は軒並みキャンセルされるか、数隻程度が完成するぐらいだろう。 そして、その後は大量に配備された戦車や航空機、軍艦の除籍や廃棄が始まり、いくつかの陸軍部隊は解隊され、将兵は米本土に復員する。 講和を結んでから1年ほどは、それで忙しくなるだろう。 では、その後は? シホールアンル、マオンドという2大強国が健在ならば、表面上は平和でも、水面下では激しい情報合戦が繰り広げられるだろう。 場合によっては、互いの軍事力が対峙したまま、年月が過ぎて行く事もあり得る。 (冷たい戦争……いわば、冷戦と言う奴か) ホプキンスはそう思った。 「ハリー。君は、講和を結んで、良い事はあると思うかね?」 唐突に、ルーズベルトが聞いて来た。 「は。私の考えでは、海外に派遣していた陸海軍の将兵が本国に帰還する事で、国内の産業に労働力を供給でき、結果的に国の 経済発展に貢献できるだろうと思っています。」 「確かにな。だが、その時には戦争が終わり、軍需産業は軒並み下降に転ずる。それによって、激減していた失業率がまた上がりかねないぞ。」 「それに代わる公共事業を行うのです。」 「公共事業……か。それも手ではある。」 ルーズベルトは頷く。 彼は、体を正面に向け直した。 「だが、それにも限りはある。本土内だけでは、全ての復員兵にも与えられるような仕事が確保できるかどうか。まぁ、 そこの所は追々考えるとしよう。」 「我がアメリカはまだいいとして……シホールアンルや、マオンドに占領されていた国の住民達は納得してくれるでしょうか?」 「………」 ルーズベルトは押し黙る。 戦争が終わる事に関してははまだ良い。 講和を結んだ後も、シホールアンル、マオンド両国は、戦争犯罪人を裁く裁判に関しては、連合国側からも協力を願うと言っている。 だが、ルーズベルトは、この裁判はほぼ不完全な形になるだろうと思っている。 裁判自体は真剣に行われるであろう。しかし、シホールアンルやマオンド側は、内面的にはなるべく、自国の不利になるような事を晒したくないだろう。 裁判を開始する前に、重要な証拠を握る戦犯の口封じを行う可能性は極めて高い。 法廷に出されるのは、ただの木偶人形と化した小物だろう。 そんな事をすると確信している被占領国の住民達は、アメリカや連合国の講和に納得しないだろう。 最悪の場合、そこから新たな火種が生まれる可能性もある。 「おそらく、納得せんだろう。特に、レーフェイル大陸の国々は、講和後も揉めるかもしれぬな。」 ルーズベルトは、掠れた声でホプキンスに言う。 「いずれにしろ、これからは講和を結んだ後の事を考えた方が良いかもしれない。誠に、不本意ではあるが。」 「閣下…」 「だが、私は最後まで諦めるつもりは無い。」 彼ははっきりとした口調でそう断言した。 「時間の許す限り、私は、この講和を……我々の前に差し出されたバッドエンドを回避させる事に専念する。」 ルーズベルトは、不退転の意志を固めながら、ホプキンスに言った。 しかし、その半面、彼の心は晴れなかった。 (とは言うものの…私自身、なかなか案が浮かんで来ない。) ルーズベルトは、天井を見上げながら、再び思案を始める。 (何か……無いのだろうか。シホールアンルやマオンドの策略に引っ掛かりつつある、国民の目を覚ますための薬は。) ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 訂正 事態至りました=事態に至りました。
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第231話 とあるアメリカ人捕虜の日常 1485年(1945年)3月18日 午前7時 シホールアンル帝国北東部 耳元に、けたたましい音が鳴り響いて来る。 サイレンのようでもありながら、そうでもない不快気な金属音は、眠る者の耳元に容赦なく突き刺さり、眠りの中に沈んでいる捕虜達の意識を、 夢の世界から現実世界に引き戻して行く。 「クソ……忌々しい音だ……」 アメリカ海軍大尉であるロナルド・ブガーリンは、寝ぼけた口調で呟いた後、耳を抑えて睡眠を続けようとする。 だが、不快気な金属音は尚も鳴り響き、彼が眠りに付く事を執拗に妨げた。 「ええい……!」 ブガーリンは、全身にかぶせていた粗末な毛布を思い切り吹き飛ばし、ベッドから姿勢を起こした。 「うるせえぞ馬鹿野郎!さっさとこの糞みたいな音を止めろ!!」 ブガーリンは、固く閉ざされた鉄製のドア目掛けて罵声を放った。 その直後、耳障りな金属音は鳴り止み、室内は再び、静寂に包まれた。 「おはよう。ブガーリン大尉。」 ドアの向こう側から、野太い声が聞こえた後、監視口が開かれ、そこから無機質な視線が室内に注がれた。 「今日もいい朝だな。」 「いい朝?ここにぶち込まれてから、いい朝なんてあるもんか。」 馴れ馴れしい口調で喋るシホールアンル人士官に対して、ブガーリンは憎々しげに返す。 「まっ、噂に聞いていた、捕虜の虐待とやらが殆ど無い事に関してはいいもんだなとは思ったがね。」 「ハッハッハ。そいつはどうも。我々も、捕虜の扱い方に関しては勉強しているのでね。」 シホールアンル人士官は、心地良さげに笑ってから、ドアの前から離れて行った。 「勉強している……ねぇ。じゃあ、昨日遅くまで、拷問室からうっすらと聞こえてきたあの悲鳴は、一体何だったのやら………」 ブガーリンは眉をひそめながら呟いた後、ゆっくりと固いベッドから立ち上がり、吹き飛ばした毛布を畳んでベッドの上に置いた。 彼は、青い捕虜服の袖を軽くはたいた後、警備兵がドアをノックするのを確認してから外に出た。 個室の外に出ると、そこには、長さ20メートルほどの通路が伸びており、その両側には8個もの独房が設けられ、中から彼と同じ アメリカ人捕虜が出てきた。 通路の所々には、武装したシホールアンル兵が睨みを利かせながら立っている。 ブガーリンは、通路の右側に顔を向けた。 通路の右側は、他の区画に繋がる出入り口となっており、左側は壁で行き止まりとなっている。 出入り口付近には、士官と思しきシホールアンル将校が仁王立ちで8名のアメリカ軍捕虜を見回していた。 「おはよう諸君。これより、いつもの点呼を始める。」 幾分、猫撫で声のようにも思えるトーンの高い声音が通路に響く。ブガーリンと会話を交わした将校は、この男である。 「番号1!」 「2!」 「3!」 通路内の捕虜達が次々と自分に割り振られた番号を読み上げて行く。 「7!」 ブガーリンは、張りのある声音で自分の番号を言った。 点呼は10秒もかからぬうちに終わった。 「分長殿。緑3-5分区の点呼終わり。異常ありません。」 「よろしい。」 分長と呼ばれた男は、満足そうに頷いた。 「それでは諸君。これより朝食を取る事にしよう。今日の作業は午前8時から開始となっている。それまで、しっかりと英気を養っておくれ。」 シホールアンル将校はそう言った後、部下2人を連れて立ち去って行った。 ブガーリンも含めた8人の捕虜達は、シホールアンル兵に監視されたまま緑3-5区分と呼ばれた場所から食堂に移動していく。 程無くして、8人は収容所内にある食堂に辿り着くや、粗末な食器を持って今日の朝食を受け取った。 食堂内の大きさは、計300人程の人員が収容できる程で、捕虜達は、長テーブルの両側に置かれたイスに座り、そこで食事を取る。 給仕係は、捕虜達が交代で行っている。 ブガーリンは、2皿の食器に卵と肉を適当に混ぜた物とパンらしき物を入れて貰った後、とぼとぼと長テーブルに食料を置いて食べ始めた。 彼が半ば寝ぼけながら、あまり美味いとは言えない朝食を口に運んでいる時、向かいに別の捕虜が座った。 「おはようございます、大尉殿。」 若いエルフの男性が、にこやかな笑みを浮かべながら挨拶を送って来た。 「おはようさん。レンヴィスはいつも爽やかだな。」 ブガーリンは、半ば羨ましげな口調で、エルフの男性に言う。 「ええ。どんな状況でも常に元気であれ、というのが自分の心得ですからね。」 目の前のミスリアル人中尉の言葉に、ブガーリンはまたその言葉かと思いつつも、同時に感心もしていた。 レンヴィス・クルヴァウト中尉は、捕虜になる前はミスリアル軍第5機械化歩兵師団のいち小隊長として戦っていたが、昨年の7月、彼の率いる 小隊はシホールアンル軍の待ち伏せを受け、大損害を被った。 レンヴィスは、自ら囮となって部下を逃したが、彼は逃げ切れずに捕虜となった。 「しかし大尉殿も、本当に運が良いですな。私なんかは、ここに来る前に別の収容所に入れられていましたが、そこでは看守共の捕虜虐待なんかは 日常茶飯事です。その捕虜収容所も、アメリカ軍爆撃機の誤爆で吹き飛ばされてしまいましたが、そのお陰で、自分はここに来る事が出来ましたよ。 不幸中の幸い、って奴ですね。」 「ありゃ痛恨のミスだったと俺は思う。俺は海軍所属だから詳しい話は知らんが、B-29の爆撃手は恐らく下手糞だったのだろうな。」 「でしょうね。」 レンヴィスは相槌を打った後、朝食を取り始める。 「とはいえ、この国もそろそろ、詰み始めていますね。レスタン領はもはや失われ、本土の中部にまでスーパーフォートレスが飛び始めているんじゃ、 この戦争の行く末は決まったも同然です。もしかしたら、今年中までには、自分達は祖国に帰れるかもしれませんよ?」 「ハハ、そうだと良いんだがなぁ。」 レンヴィスの言葉に、ブガーリンは苦笑しながら答える。 彼は再び、卵と肉を混ぜ合わせた料理を口に運んだが、相変わらず、味は良くなかった。 (幸運か……確かに、俺は運が良かったな。本当なら……俺は1月23日の時点で、死んでいる筈だったからな) ブガーリンは心中で呟きながら、自らがここに来るきっかけとなった、ある出来事を思い出した。 ロシア系アメリカ人であるロナルドは、1941年に海軍航空隊に入隊した後、42年中盤まで訓練を行い、42年12月末には、当時最新鋭の 空母であったエセックスの艦攻隊の一員として前線配備され、以後、各地の戦線を転々としていった。 レーミア沖海戦時には、空母エセックス艦攻隊の一小隊長として敵機動部隊攻撃に参加したが、彼の乗機は対空砲火によって撃墜された。 機体が光弾をもろに浴びて火を噴いた時、操縦を担当していた彼はこの時、自らの死を覚悟した。 機体が海面に激突した瞬間、彼の意識はぷっつりと消え、ロナルドは自らの生命が終わったのだと、否応無しに思わされた。 だが……幸運な事に、彼は生きていた。 次に気が付いた時には、彼はシホールアンル駆逐艦の医務室で寝かされていた。 ロナルドはそこで、シホールアンル駆逐艦の軍医に自らが救助された時の状況を伝えられた。 軍医の話によれば、ロナルドの機体は、竜母に魚雷を発射した後、対空砲火を食らって火を噴き、そのまま滑り込むような形で海水に着水した。 ロナルドのアベンジャーは、その1分後に水没したが、偶然にも、ロナルドは自力で機体から這い出して来たという。 その後、駆逐艦の艦長は独断でロナルドの救助を命じ、彼はその10分後に、駆逐艦に拾い上げられたようだ。 その時の記憶は、ロナルドには全く無かった。 ロナルドは、自分が機体から脱出し、救助されて医務室に転がされるまでの記憶が全く無い事を軍医に言うと、軍医は首をかしげた。 「全く覚えていないのかね?君は、救出された後、うちの水兵から2発ほどぶん殴られていたんだが。もしかして、それがきっかけで一時的な 記憶喪失が起きたのかな。」 その時、ロナルドは微かに、右頬の辺りに痛みを感じたが、その後に湧いたのは、自分が生き残る事が出来たという感情と……他の2人は どうなったかという不安であった。 「軍医長。自分の仲間2人は………2人は、どうなったのでありますか?」 「……機体から脱出して来たのは、君だけだったよ。」 軍医の口から吐き出された残酷な現実の前に、その時のロナルドは、一瞬、目の前が真っ白になった。 シホールアンル軍は、彼が事前に聞いていた噂とは違い、ロナルドを丁重に扱った。 ロナルドは、脱出の際、右腕を負傷していたが、軍医は敵であるロナルドに手当てを施し、温かい食事を与えてくれた。 シホールアンル駆逐艦は、その後、戦闘海域から離れ、1月27日にはシホールアンル本土西部にあるヒレリイスルィに到着し、そこで、 ロナルドは身柄をシホールアンル陸軍に引き渡され、途中で簡単な尋問を受けながら、このシホールアンル本土北東部にあるフレイラング捕虜収容所に 移送された。 ロナルドは、フレイラング捕虜収容所に移送される間、シホールアンル兵に虐待を受けるのではないかと思っていた。 だが、シホールアンル兵は、彼を口汚く罵りはしたものの、それ以外は何ら暴行を働く事もなく、旅路の後半では、彼と少しばかり親しくなったほどである。 この収容所に来てから、ロナルドの捕虜生活は始まった。 フレイラング捕虜収容所には、総計で2000名の連合軍捕虜が捉えられており、そのうち、半数はアメリカ軍人であった。 ロナルドは、心中では捕虜生活を憂鬱に思ってはいたが、それでも、捕虜生活には必要な、親しい知り合いを作る事には全力を尽くした。 その親しい知り合いの1人が、目の前にいるエルフの青年である。 「今日もまた、鉄道建設をやらされるのかなぁ。」 「ここ1週間はそればかりですから、今日もそうでしょう。」 ロナルドの言葉に対して、レンヴィスは爽やかな口調で答える。 「まったく、面倒な物だな。鉄道建設はシホット共だけでやればいいのに。」 「大尉殿は動くのが苦手ですか?」 「ああ、苦手だよ。」 ロナルドは自嘲気味に答える。 「特に、自分が望んでいない仕事を無理やりやらされるのは大嫌いだ。俺達は捕虜なんだから、独房で寝そべっているだけで十分だろうに。」 「そうですかね……私は、適度に運動が出来て良いと思いますよ。作業自体はきついですが。」 「運動なんて、収容所のど真ん中にある広場を散歩するだけでいいだろう。わざわざ重労働をさせるのは、俺達に対する嫌がらせだと思うんだが。」 「まぁ……そう言われれば確かに。」 レンヴィスは肩を竦めた。 「でも、自分達は敵に囚われの身となっていますから、今は、命があるだけでも儲け物ですよ。ちょっと前までは、自分と大尉殿が、こうして 自由に話しただけでも、即刻処刑された事もあったようですから。これは別の収容所での話ですが。」 「ホント、シホット共は野蛮だよな。」 ロナルドは忌々しげに言った後、残った不味い朝食を一気にかきこんだ。 午前8時からは、収容所から4キロほど離れた北の森林地帯で鉄道の建設を行った。 鉄道建設に駆り出されたのは400名で、1個中隊のシホールアンル兵が目を光らせている中での重労働であった。 午前12時になると、1時間半の大休止が命ぜられ、捕虜達は、その場その場で休憩を取った。 ロナルドは、休憩中の間、東の方角を見続けるのが最近の日課となっていた。 「……あの、海の向こうには、アリューシャンがあるんだよなぁ。」 彼は、作業場である森林地帯から見える海岸線を見ながら、遥か向こうにある合衆国領に思いを馳せて行く。 ロナルドは、アリューシャン列島のウラナスカ島で生を受け、少年時代は父と共に、外海へよく漁に出ていた。 その際、アリューシャン列島沿いの島に立ち寄る事もあり、列島の西端部に位置するキスカ島やアッツ島にも寄港した事がある。 キスカやアッツは、北の何も無い島と言う記憶しか無かったが、今では、その2つの島が恋しくて仕方が無かった。 「あそこに行けば、俺は、シホットの土地から解放された事になる。あんな島でも、あそこはアメリカ合衆国の領土だ。だが、俺は、 合衆国でなく、敵国の土地で、こうして捕虜生活を送っている……若い時は、別に無くてもいいとすら感じていたあの島を、これほど 恋しく、そして、羨ましく思う時が来るとはね。」 ロナルドは深く溜息を吐いた。 気温が低いせいで、彼の口からは真っ白な煙が吐き出される。 アリューシャン列島よりもやや高い緯度にあるこの地域は、3月はまだまだ冬の季節である。 彼らの作業場である森林地帯には、所々に雪が積もっている。 今日は晴れであるため、気温はまだ高いが、それでも8度しかない。 普段の作業をするにも、分厚い防寒服を付けなければまともに働けない季節である。 ただ、今日は晴れと言う事もあり、防寒服を少しばかり着崩した形で休憩を取る事が出来た。 勿論、隣に暖房用の焚火を焚いてからだが。 「おや……こんな所にいたのか。」 ロナルドは、声が聞こえた方向に目を向けた。 「やあ、隊長さん。こんな所と言っても、作業場からは大して離れていないと思うが。」 隊長と呼ばれたシホールアンル軍将校は、そう言われてから苦笑を浮かべた。 フリスラ・ヴェイスグ大尉は、収容所内を警備する警備大隊に属する中隊の指揮官である。 昨年の9月より採用された、緑と茶色の混ざったシホールアンル軍野戦迷彩服に身を包んだ彼は、身長が180センチほどと高く、体つきも がっしりとしているが、顔つきはどこか柔和である。 ただ、過去の戦で受けたと思しき右目の傷跡は、その柔和そうに見える顔つきを精悍な物にしていた。 「歩いて50歩ほどしか離れていないが、それでも少し遠すぎるな。せめて、俺達の目に付く所に居て貰わなければ。」 「む。目に付く所に居てくれだと?あんたらの事はしっかり考えた筈だがね。」 ロナルドはそう言いながら、焚火に指をさした。 「俺達は捕虜だ。逃げはせんよ。」 彼はそう言いながら、仰向けに寝転がった。 「いつになるかは分からんが、この戦争も終わるだろう。」 「ああ。そうだろうね。」 フリスラも肩を竦めながら相槌を打った。 ロナルドは、この若い中隊長が気に入っていた。 フリスラは、シホールアンル軍人には必ず見られるような、尊大な態度や、捕虜に対する悪態を全く付かなかった。 それどころか、フリスラはどのような捕虜に対しても親しげに喋り、常に自分の事を謙遜する紳士であった。 彼は、一見すれば戦場でも名を馳せた歴戦の戦士に見え、実際、北大陸統一戦初期から、昨年の8月まではエルネイル戦で戦ってきた文字通りの強者である。 だが、フリスラの性格は、歴戦の勇士には似合わない、心優しい物であり、捕虜達の間でも、フリスラは人間の出来たいい奴だ、という評判を得ていた。 「しかし、不思議だよなぁ。」 ロナルドは、何気無い口調で言葉を紡ぐ。 「この収容所の連中は、人にはよるが、俺が今までに聞いて来たシホールアンル軍人とは全く印象が異なるな。収容所の連中には、俺達に対して あからさまな態度を取る奴も当然いるが、そんな奴も、裏では捕虜に作業の仕方を真摯に教えたりと、なかなかに出来た奴でね。まっ、素行不良な 捕虜には当然容赦ねえが、何もしなければ、連中も何の危害も加えない。隊長さん、この収容所には、他と違って、いい奴ばっかりが集められてるのかね?」 「いい奴……俺達が、かね?」 「ああ、そうだ。」 ロナルドは頷く。 「俺は正直言って、シホットが嫌いだった。でも、あんたらを見ていたら、いいシホールアンル人がいるんだなと思ったよ。」 「……あんたらアメリカ人も、いい奴らばっかりだよ。」 フリスラは、どこか、悲しげな口調でそう言う。 「だが……どうしてこうなってしまったのだろうか。何故、俺の祖国は、何の考えも無しに戦争なんて起こしたのだろうか……」 「………」 フリスラは、唯一動く左目を、しきりに瞬かせながら呟いた。 「あまり深く考えるなよ。」 ロナルドは、フリスラの肩を叩いた。 「戦争は、今も続いているんだ。どう終わらせるかは、お偉いさん達に任せるしかない。」 「……言われてみれば、確かにそうだが……」 口籠るフリスラを見たロナルドは、別の話題に切り替えた。 「そういや、あんたは、この戦争が終わったら何をしたいか考えているかい?」 「な……何を言うかと思ったら、いきなりそれか!」 突拍子もない事を言い出すロナルドに、フリスラはやや戸惑った。 「まあまあ、落ち着けよ。」 「うむむ……君のこう言う所は既に何度か経験しているが……本当に怖い物知らずだな。俺ならまだいいが、人によっては馬鹿にしているのか と言われかねんぞ。」 「怖い物知らずじゃなきゃ、雷撃屋なんてやっとれんからね。」 ロナルドは誇らしげに言いながら、右手の親指を自分に向けた。 「はぁ……戦争が終わった後ねぇ。」 フリスラは仕方ないとばかりに、前々から考えていた戦後の身の振り方を話し始める。 「俺は、西部の商屋の生まれなんだが、16歳の時に軍に入って以来、常に前線で戦い続けた。だが、もう戦いに疲れてしまってね……良い面も見たが、 それ以上に悪い面も見せられたせいで、もう軍隊は嫌になってしまった。この戦争を生き延びる事が出来たのならば、軍を辞めて、親父の後を継ごうかなと 考えているよ。」 「軍を辞めるのか。あんた、シホールアンル軍内では、冷厳のウェイスグとか呼ばれて英雄視されているそうじゃないか。他の警備兵が噂話にしていたのを、 俺はちゃんと聞いたぜ。あんたなら、軍に残っても出世しそうなんだが。」 「そんな俺が、どうして、こんな僻地に居ると思う?」 フリスラは、自嘲気味な口調でロナルドに聞く。 「……?」 「左遷されたのさ。」 その時、ロナルドは自分が不味い事を聞いてしまったと思った。 「昨年8月末のジャスオ戦線で、俺は死守命令が下りていたにもかかわらず、独断で部隊を後退させたんだ。あの時、俺の中隊は既に8割が死傷し、 とても戦闘が続けられる状態じゃなかった。なんとか敵を追い返し、後方の大隊本部に後退の許可を願い出たら、死守せよの繰り返せ、だ。 当時は、前線に突出していた部隊は俺の中隊だけで、あとは後退するだけだった。だが、敵は何故か、俺の中隊に波状攻撃を仕掛けて来る。俺の中隊は、 何度も敵の攻撃を跳ね返したが、4度目の攻撃を撃退した所で部隊は大損害。もはや、防衛は無理と判断して後退許可を願い出たら、出てきたのは 死守命令と言う有様。俺はやっていられなくなって、負傷者を馬車に乗せて後退したんだ。だが、その後に待っていたのは、命令無視を名目にした、 大隊長殿の憂さ晴らしさ。」 「似たような話を、陸軍に行っている弟から聞いた事があるな。馬鹿な上官が居るのは、どこの国でも一緒か。」 「ま、そう言う事になるな。」 ロナルドは不意に、胸ポケットに手を入れる。そして、中身が無い事に気付き、恥ずかしさの余り顔を赤くした。 「お、どうかしたのか?」 「いや……まぁ、なんだ。」 彼は恥ずかしげに呟いた後、体を起こした。 「俺はね、捕虜になる前はタバコを吸ってたんだ。」 「タバコというと、紙で巻いた葉の事か?」 「ああ。さっき、胸ポケットに手を入れたのは、タバコを吸いまくっていた時の名残でね。」 「そういえば、俺の国は、アメリカほど紙巻きタバコが出回っていないどころか、キセルで吸う奴しかないからな。」 「そう。そして、そのような嗜好品は無いから俺達はタバコを吸えん。だが、おれのような重度のヘビースモーカーは、時として、あのような 恥ずかしい癖を見せてしまう物なんだ。まったく、タバコが吸えない事は辛いなぁ。」 「不便だろうが、我慢してくれる事を願うよ。」 フリスラの言葉に、ロナルドは不機嫌そうな口調で答える。 「わかっとるよ。俺達は、あんたらに捕えられた身なんだからな。贅沢言わずに、大人しく従うさ。」 「……俺達としても、君らを不自由にするのは心苦しい事だが、頼むよ。」 「はいはい。仰せの通りにいたしますよ、大尉殿。」 ロナルドは、わざとらしそうな口調でフリスラに言った。 「ひとまず、俺の戦後はこんな物だな。今は、中東部の辺りに家を構えているが、いつかは妻と子供と一緒に、西部の実家に戻りたいなぁ。」 「妻子持ちか、羨ましいねぇ。」 「おや?君はまだ、相手が居ないのかね?」 フリスラ質問すると、ロナルドは左手をひらひらと振った。 「生まれてから過ごした時間と、彼女いない歴が一緒だからな。何度か告白したんだが、全部駄目だったよ。」 「うむ……悪い事を聞いてしまったかな。」 「いや、いいさいいさ。女に恵まれない分、戦場では結構、運に恵まれていたからな。ただ、女のハートじゃなく、魚雷を当てるのだけ上手く なっても、自慢にはならんがね。」 ロナルドは、後頭部をぼりぼりと掻きながら、半ば自嘲気味に話した。 「あんたは、戦争が終わったら実家に帰ると言ったが、俺の場合、国に帰ったらまず、彼女を探す事だな。生まれてから30年過ぎても、彼女の 1人すらいない状況じゃ、うちの両親に申し訳が立たんよ。まぁ、これまでの経験からして、雷撃を行うよりも難しいと、俺は思っているけどね。」 「いやいや、意外とすんなり行くかも知れんぞ?女という奴は、野生味のある男に惹かれるらしいぞ。君なんて、3回の魚雷攻撃に成功した歴戦の 勇士じゃないか。俺達の味方が犠牲になった事に関しては、幾らか憎い分はあるが、それを差し引いても、君は立派な奴だと思うな。」 今度はフリスラが、ロナルドの肩を叩いた。 「自信を持て。そうすりゃ、女の2、3人ぐらい、すぐに引っ掛けられるさ。」 「2、3人はやりすぎだな……女は1人で十分だと思うぞ。でなきゃ、どっちか一方に恨まれた挙句、馬乗りにされながらナイフでめった刺しに されかねんぞ。いや、場合によってはショットガンで頭を吹き飛ばされるかも知れん。」 「ハハハ、また自信の無い事を言う。まぁ、要はそのような気概で行けば良いという事だよ。俺は実際、そんな気持ちで好きな人に告白したぞ。 何事も自信を持て。猛烈な対空砲火を幾度も掻い潜って来た君なら、恋人探しもちょろいもんだろう。」 「ほほぅ……そこまで言われると、俺もやれそうな気がして来たな。」 フリスラの言葉に勇気づけられたロナルドは、次第に自信が湧き始めて来た。 「よし!では、戦争が終わったらあんたの言う通りにやってみるよ!」 「おう、その調子だ。」 フリスラはそれに気を良くしたのか、にこやかな笑みを浮かべつつ、懐にしまってあった時計を取り出した。 「おっと、休憩時間はもう終わりだ。せっかく、良い気分になった所悪いが、午後もうんと働いて貰うぜ。」 「もう終わりか。時間の流れは早いねぇ……」 ロナルドは、先とは打って変わったつまらなそうな口ぶりでぼやきながら、素早く焚火を消して、足早に作業場に戻って行った。 3月20日 午後7時 フレイラング収容所内 その日、ロナルドは収容所の屋上に上がるため、ゆっくりとした足取りで階段を上がって行った。 「しかし、僅かながらとはいえ、収容所内を自由に歩ける場所があるのは良い事だな。昼間は所内の真ん中にある運動場で暇を潰せるし。 あと1週間は外の重労働も無いから、しばらくのんびり出来る。」 彼は、のほほんとした声音で呟きつつ、口元にくわえた小さな木の管を右手で掴む。 「はぁ……これでタバコが吸えれば、文句無しなんだが……贅沢は言っとれんな。」 ロナルドは小さなため息を吐いた後、再び木の管をくわえ始めた。 ヘビースモーカーであるロナルドは、せめてもの慰めとして、食事の際に出される小さな木の管をタバコ代わりにくわえているのだが、 最近は空しさばかりが増しているような気がするため、近々やめようかと考えていた。 3階の屋上に繋がる木製のドアの前に立った時、ドアの向こう側から声が聞こえてきた。 「それでは隊長、自分はこれで……」 そのような言葉を耳にした時、唐突にドアが開かれた。 ドアの向こう側からは、フリスラの副官であるシホールアンル軍軍曹が現れた。 その軍曹は、ロナルドと目が合うや、鋭い目つきで彼を見据えた。 「………何だよ。」 「………アメリカ人というのは、大した道化だな。」 軍曹は、皮肉気な口調でそう言うや、慌ただしい足取りでロナルドの側を通り過ぎて行った。 「一体、どうしたってんだ?」 ロナルドは首を捻った後、軍曹の言った言葉をさほど気にもせぬまま、ドアを開いて屋上に出た。 屋上には、冷たい風が吹いていた。ロナルドは、屋上の隅で、手すりにだらしなくもたれかかっている男がいる事に気が付いた。 「……おう、どうしたんだ?」 その男は、すっかり顔なじみとなったフリスラであった。 フリスラは、呆然とした表情のまま反応しない。不審に思ったロナルドは、もう1度声をかけた。 「おい、どうしたんだ?大丈夫か?」 ロナルドの声が聞こえたのか、フリスラが顔を向けて来た。 「……なんだ。俺に何か用か。」 フリスラは、無表情のまま答えて来た。いつもは、明るく、紳士的な態度を見せて来た彼であるが、この時は、まるで、抜け殻を 思わせるかのような姿であった。 「いや……用は無いんだが……それよりも、どこか調子が悪いのか?顔が真っ青だぞ。」 「……これが原因さ。」 フリスラは、いつからから持っていた紙をひらひらと振った後、いきなり、ロナルドの胸倉を掴んで来た。 「な……おい、何をするんだ!?」 「………!!」 ロナルドは、突然襲い掛かって来たフリスラの顔を見るなり、愕然とした。 フリスラの顔は、憎悪で歪んでいた。 「………ロナルド!あんたはいつだったか、アメリカはシホールアンルと違って後方にいる無垢な一般市民を最初から狙い撃ちにした事は無い、 と言っていたな?ならば……これは、どういう事なんだ?」 「どういう事だと?俺には意味がわからんが……」 「うるさい!!」 フリスラは叫ぶ。 「俺の……俺の妻と子供は、昨日。あんたらアメリカ軍の爆撃のせいで死んだんだ!!」 「!!!」 突然の告白に、ロナルドは仰天し、言葉に詰まってしまった。 「俺の家族は、軍需工場の近くに住んでいたが、爆弾が落ちた時は、家から1ゼルド(3キロ)も離れた待避所にいた。なのに、アメリカ軍機の 投下した爆弾は、待避所にも落下し、そこに避難していた300名の一般市民が死亡した……その中に、俺の家族も含まれていたんだ……!」 「………」 「今しがた、軍曹がこいつを渡してくれた。正直言って、俺は……この現実を受け入れ難い。いや、受け入れたくない。嘘だと信じたい…… でも、この書類には、死亡は確実であると明記されている。」 フリスラの声が、次第に震えて来た。 「俺は認めたくないのに……こいつは、はっきりと認めろ……と、書いてある……なぁ、ロナルド……これは認めるしかないのか?」 「……」 「何か……なにか言ったらどうなんだ!!」 「………」 「何か言えと言っているんだ!この虐殺者が……!」 フリスラは、激情に任せるまま、ロナルドの顔を殴ろうとしたが……その拳は、ロナルドの頬に当てられる事は無かった。 「……う………ぐ……」 「……殴っても良いぜ。それで気が晴れるんなら、俺は構わんさ。」 「……!」 「あんたの家族を殺したのは、俺と同じアメリカ人だ。そのアメリカ人を、あんたはぶちのめす権利がある。いや、あんたが腰に吊っている剣で 殺しても構わんだろう。復讐は何の意味も成さない愚かしい行為だが……少なくとも、心情的には満足する事が出来る。あんたは、それをする 権利がある。」 「………うう……」 「さぁ、気が晴れるまでやってくれ。」 「………」 フリスラは、再び拳を振り上げる。だが、拳はすぐに下げられ、フリスラはその場に蹲り、すすり泣いた。 「……いいや、いいんだ。こんな俺に、復讐をする権利なんて……元から無かった。」 「ん?それは、どういう事だ?」 「簡単な………話さ。」 フリスラは、服の袖で涙を拭いた後、俯いていた顔を上げた。 「俺は、このような事に遭って、当然の事をしでかしたんだ。」 「おいおい、一体、何を言っているんだ。」 「すまないが、俺の過去話に付き合ってくれんか?」 「な、何だと?」 フリスラの一方的な言葉の前に、ロナルドは戸惑ったが、フリスラはそれを気にする事無く、話を続けた。 「俺は、今から11年前……1474年2月に、一下士官としてレスタン戦争に参加した。俺達の部隊はある時、戦火から逃れた住民達から 保護してくれとお願いされた。俺は小隊長から許可を貰って、住民達を保護し、まだ残っていた民家に住まわせた……だが、後続の国内相軍部隊が、 何を血迷ったのか、住民達は敵だと決め付け、攻撃しようとしたんだ。」 「国内相軍……あの、悪名高いギャング共か。」 「俺は、必死に国内相軍を説得しようとしたが、駄目だった。それどころか、国内相軍の連中は、俺達を親レスタン派というレッテルまで貼って 激しく追及し始めた。最終的に、俺は彼らに屈するしか無く、国内相軍は、住民達を民家ごと焼き払ったんだ。あの時犠牲になった住民は、 俺の顔を見るなり、裏切者と罵っていた。そして、俺の家族も、自分達と同じように、虫けら同然に殺されていくがいい、と言う住民も、何人いた事か……」 「ちょっと待て、あんたは、ギャング共の脅迫に屈しただけで、手を下していないじゃないか。」 「俺が手を下したも同じだ。」 ロナルドの言葉を、フリスラはきっぱりと否定する。 「俺がもっと粘っていれば……国内相軍の連中を退けていれば、その場に居た、600名の住民達は助かったのかもしれない。それ以前に、 彼らにここは安全だと言って、もぬけの殻の村落に引き止めたのは俺だ。俺が引き止めさえしなければ、あの悲劇は起こらなかったんだ。」 「……」 「彼らが味わった事を、今度は俺自身が味わう事になった……それだけの話さ。」 フリスラは、諦観の念を浮かべた後、ゆっくりと立ち上がった。 「さっきはすまなかった。虐殺者は、君より、むしろ、俺の方だったな。」 「いや……その……」 「いや、いいんだ。勝手に八つ当たりした俺が悪かったよ。そうだ、君の言う通りだ。過ちを犯した俺に、君を殴る権利は全く無い。復讐なんて おこがましい事だった。だから、先程の非礼は、許してくれ。」 フリスラは作り笑いを浮かべると、持っていた紙をびりびりと破き、その場に捨てた。 「俺は、そのようなつもりで言った訳じゃ……」 ロナルドは、フリスラとの会話を続けようとしたが、彼は、ロナルドに背を向け、それ以上話を聞かなかった。 173 :ヨークタウン ◆x6YgdbB/Rw:2011/09/24(土) 22 11 29 ID 8niukkLQ0 「じゃ、今日はこれで休むよ。またいつかな。」 フリスラは背を向けたままそう言うと、飄々とした足取りで屋上から立ち去って行った。 「……あんたは、本当は辛いんだろう?いっその事、あらん限りの声で鳴き叫びたいんだろう?」 ロナルドは、深い悲しみを背負った、フリスラの後ろ姿を思い浮かべながらそう言い放った。 「なのに、あんな作り笑いを浮かべて……馬鹿野郎が。無茶しやがって……」 3月22日 午後8時 同収容所内休憩室 ロナルドは、1人で考え事に耽っていた所に、唐突に、フリスラから声を掛けられた。 「やあロナルド。浮かない顔をしているな。」 「おお、あんたか。久しぶりだな。」 「久しぶりという程でもないだろう。」 「いや、この狭い収容所内で2日も顔を合わせなかったらそうなるよ。」 ロナルドは苦笑しながら、フリスラにそう言った。 彼は、2日前の事が気になり、フリスラに話をしようとしたが、寸での所で抑えた。 (うちの親父から聞いた話では、心に深い傷を負った奴には、迂闊な事は聞くなとあったな。今はまだ、ショックが抜けていない だろうから、聞くのは止めよう……まぁ、聞きたい事は他にもあったんだが、それはまた、別の機会に。) 「あー………そういや、2日後にまた野外労働をやるそうだな。」 「この間の続きだな。今度は、線路敷設予定地点の木を伐採して貰う事になる。」 「木こりさんの真似事って訳かい。」 「なあに、木の数を数えながら切り倒して行く、簡単な仕事さ。」 「チェッ、言ってくれるね。実際にやるのは俺達なんだぜ。あんたらの課す労働はどれも重労働ばかりだぜ。」 「こっちも色々と考えながらやってるんだよ。それに、労働を課せと言っているのは上からの命令でね。」 「……ふむ、上からの命令とあらば、仕方ないって事か。」 「そういう事だな。」 フリスラは肩を竦めながら、ロナルドに言う。 「……じゃあ、それまではのんびりと過ごさせて貰うよ。」 ロナルドは、生あくびをしながらフリスラに返した。 「………ロナルド、君は私に、聞きたい事があるんだろう?」 「聞きたい事?何をだい?」 「あの時、俺が何故、君を殴らなかった事をだ。」 「……」 図星であった。 普通なら、ロナルドはフリスラに殴られて当然であった。 彼は、フリスラに対して何故、すぐに殴らなかったのかと疑問に思っていた。 最初、フリスラがロナルドを殴らなかったのは、単に殴るタイミングを逃しただけであり、その後は殴る気が失せただけだろう、としか思っていなかった。 それから、自らが迂闊な事を口にしなかった事も、フリスラがすぐに手を上げなかった原因にもなったのではないか?とも考えていた。 だが、よくよく考えてみると、それは少し違っていたような気がしていた。 この収容所内のシホールアンル兵は、見た所はいい奴が揃っているが、捕虜側が何らかの不手際を起こしたりした場合は、すぐに暴行を加える者も居る。 だが、フリスラは、他の捕虜達からも評判が良く、ある兵士は、フリスラを誤って転げさせた事があったが、フリスラはそれを気にする事無く、逆に、 転ばせた捕虜に怪我はないかと心配して来たという。 通常のシホールアンル将兵と違って、フリスラは何かが違っていた。 その違いが何であるか。ロナルドはそこが気になっていた。 「ロナルド、君はエルグマド将軍を知っているかい?」 「ああ。知ってるよ。確か、レスタン領駐屯軍の司令官だった人だよな?」 「そうだ。最も、今は軍の要職から解任され、予備役編入となったが……俺は、あの人の下で2年ほど働いた事があるが、その間、俺は色々と学んだよ。」 フリスラは、ロナルドに向けて顎をしゃくった。 「君をすぐに殴らなかったのも、エルグマド将軍が口ずさんでいた言葉を思い出したからさ。」 「ほほう……その言葉とは、何だい?」 「捕虜は決して傷付けたり、侮辱しようとはするな、とね。エルグマド将軍が言うには、最後まで戦場で戦い抜いて来た捕虜は、何にも劣らぬ戦士であり、 名誉ある存在だ。それを汚そうとするやつは、身も心も汚れた、ただの馬鹿者らしい。俺は、ただの馬鹿者にはなりたくなかった。」 「だから、俺を殴らなかったという事か。」 「……そう言う事だな。」 フリスラはそう言った後、右手の人差し指を地面に指した。 「ちなみに、ここの所長も、もとはエルグマド将軍の後輩だ。この収容所が他と比べてのんびりしているのも、所長の配慮のお陰さ。まぁ、最近は余所から やって来た兵が馬鹿な事をしている事に悩んでいるようだが。」 「それはまた……シホールアンルにも、いい奴は居るんだなぁ。本当に、俺は運が良かったんだな。」 ロナルドは、ほっとした表情でそう呟く。 「それから、君に朗報だ。」 フリスラはニヤリと笑うと、持っていたカバンの中から四角い、小さな箱を取り出し、それをロナルドに投げた。 「うぉっと!いきなり物を投げて来るなよ……」 「いや、すまんすまん。ひとまず、その箱を見てくれ。」 「箱を見ろだと……って、コイツは……!?」 ロナルドは、思わず目を剥いた。 その箱は、紛れもなくタバコの入った箱であった。 彼が捕虜になる前に、頻繁に吸っていたタバコ。それも、大好きな銘柄、ラッキー・ストライクである。 「昨日、この近辺に駐屯していたうちの憲兵隊が軍の物資を横流ししていた馬鹿共を捉えてね、その際、馬車の中に入っていた物資の中に、 コイツを見つけたんだ。話によると、ケリストロルゼ作戦中に、アメリカ軍が遺棄した大量の物資の中にこのタバコも含まれていて、そいつを 接収した際に、裏からこっそりと持ち込まれたらしい。余りにも数が多いもんだから、憲兵隊の連中はどう処理しようか困ったようなんだが、 そこにうちの所長が気を利かして、大量のタバコを譲って貰ったんだ。」 「ヘイ、その所長さん大したもんだよ。俺が合衆国大統領なら、名誉勲章をあげたいぐらいだ。」 「ハハハ、そいつは光栄だね。」 フリスラはまんざらでもない様子で、ロナルドにそう返した。 「この収容所内に喫煙所って……いや、元から無かったか。となると、薄ら寒い屋上で吸うしかないな。」 ロナルドは、やれやれといった様子でイスから腰を上げたが、彼がわざわざ、遠い屋上(ロナルドからしたら、である)まで歩く必要はなかった。 「ここで吸っても構わんよ。」 「お、いいのか?」 「今日は特別さ。少しぐらいなら、部屋にタバコの匂いが染みつく事も無いだろう。」 「いやあ、そいつはあり難いね……あ、でも、ライターが無いな。」 ロナルドは、火を持っていない事に気付き、半ば落胆した。 「火ならあるぜ。ほら。」 そこで気を利かせたフリスラが、ランプを取って来た。 「……何から何まであんたに頼ってしまうとは、申し訳ないね。」 「気にするこたないさ。互いに、同じ人間なんだからな。」 ロナルドは、フリスラに軽く頭を下げた後、箱の包みを取って、タバコを1本取りだした。 タバコをくわえ、先端に火を付けた瞬間、懐かしい味と感覚が口の中に広がった。 思いきり煙を吸い込んだロナルドは、一気に紫煙を吐きだした。 「いやぁ……やはり、タバコはいいねぇ!」 「どれ、俺も1本貰っていいかな?」 フリスラの発した唐突の言葉に、一瞬、ロナルドは動きが止まった。 「む?あんた、タバコ吸えるのか?」 「こう見えても、ちょくちょくキセルは吸っているぞ。自分の愛用のキセルを持っているほどだ。君ほどは頻繁に吸って無いと思うが。」 フリスラは不敵な笑みを浮かべた。 「こりゃ嬉しい発見だね。敵とは言え、タバコ仲間が居るとは。では、仰せのままに。」 「すまないね。」 フリスラは、箱からタバコを1本取ると、ロナルドと同様、口にくわえ、先端に火を付けた。 「ふぅ~……これが紙巻きタバコの味か。悪くないね。」 フリスラは、初めて味わうラッキー・ストライクの味覚に早くも満足したようだ。 その時、休憩室に軍曹の階級章を付けた男が入って来た。 「中隊長!ここにおられましたか!!」 「おお、どうした軍曹。何かあったのか?」 「はい。大変な事が起こりました!」 その言葉を聞いたフリスラは、表情を固くした。 「大変な事だと?」 「はい!中隊長のご家族が……」 その瞬間、フリスラは、西部に居る実家に何かがあったのだと確信した。 そして、ほぼ同じ事をロナルドも考えていた。 (おいおい……まさか、フリスラは親にも不幸があったのか?) ロナルドは心中で呟くと、フリスラに同情の念を抱いた。 だが、事態は思わぬ方向に進んだ。 「中隊長殿の妻子が、収容所の正門前に……」 「な、何ぃ!?それは確かか……!」 フリスラは、思ってもみなかった出来事に、飛び上がらんばかりに驚いていた。 「はい!ひとまず、こちらへ!」 フリスラは、その場にあった空き缶にタバコを押し付けると、軍曹の言われるがまま、すぐに収容所の正門前へと駆けて行った。 休憩室には、先程と同様、ロナルドただ1人だけが取り残された、と思いきや、中にレンヴィスが入って来た。 「あ、お疲れ様です大尉殿。」 「おう、お疲れさん。」 ロナルドは、これまでに無いほど陽気な口調でレンヴィスに挨拶した。 「大尉殿、それ、どうしたんですか?」 「ああ、これか。今しがた、飛び出して行ったシホールアンル将校からプレゼントされたんだ。どうだ?」 ロナルドは、ラッキー・ストライクの箱をレンヴィスに向けた。 「いえ、自分はタバコは吸いません。」 「そうか。それは残念だ。」 「さっきの将校はどうしたんですか?えらい勢いで部屋から飛び出して行きましたが。」 「ちょいと嬉しい事があったらしい。」 「嬉しい事……ですか。」 レンヴィスは、シホールアンル将校が飛び出して行ったドアに目を向けた。 「どこの国の人間も、嬉しい事がある時は、爽やかな顔になるんですねぇ。」 「人間は、悪逆非道な国に生まれようが、どえらいお花畑の国に生まれようが、基本は変わらんもんさ。」 ロナルドはタバコを口にくわえ、一息吸ってから言葉を続けた。 「今日は、俺にとってとんでもないラッキーデーとなったが、あいつにとってもラッキーデーになったか。こう言う事が起きるのも、 ある意味、戦争ならではなのかもしれんなぁ。」 ロナルドは、しみじみとした口調で喋りながら、紫煙を吐きだした。 戦後、フリスラはレスタン戦役時の戦争犯罪行為を指揮した罪で立件され、死刑を求刑される事になるが、最終的にはロナルドが証人 として証言台に立ったお陰で、フリスラは無罪が確定し、以降、数十年に渡って2人の親交は続く事になるが、それはまだ、遠い未来の話である。
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名称:ファンタジー世界 その2 後続任務:ファンタジー世界 その3 発生条件 アストリッド(ストックホルムの酒場娘)の好感度2つ目MAX 任務目標 1.真珠アクセサリーをグダニスク取引所に届ける 2.ストックホルムに戻ってアストリッドに報告する 取得物 折り畳み用 + ... てすと 取得物と謎解きみたいなものはできるだけ、折りたたみましょう。
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名称:ファンタジー世界 その1 後続任務:ファンタジー世界 その2 発生条件 アストリッド(ストックホルムの酒場娘)の好感度1つ目MAX 任務目標 1.アストリッドに殺鼠剤を渡す 取得物 折り畳み用 + ... てすと 取得物と謎解きみたいなものはできるだけ、折りたたみましょう。
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/961.html
※投稿者は作者とは別人です 637 :外伝(またはパラレル):2008/02/02(土) 00 22 14 ID OiXF2z220 ある日のウェルバンル オールフェス「ソイツが『未来視』を使うって魔導師か?」 参謀 「この者がフェイレの居場所を突き止めてご覧に入れます」 魔導師 「視える、視えるぞ…星野仙一が韓国代表を“魔球パンジャンドラム”で…」 オールフェス「お前ら銃殺」 投下させていただきます 638 :外伝(またはパラレル):2008/02/02(土) 00 24 32 ID OiXF2z220 カレアント公国レデンツ 緑豊かな牧場と果樹園が続く美しい田園地帯にも戦火は容赦無く及んでいた ここではフランス・ノルマンジー地方のボカージに似た低木の生垣とトーチカ並に堅固な 石造りの農家がシホールアンル軍に格好の防衛拠点を提供しており、村落を小規模な要塞 に仕立てて頑強に抵抗するシホールアンル軍とアメリカ軍との間で連日激戦が繰り広げら れていた そんなレデンツのとある農村の一つで村からの視界が土手によって遮られた小道の奥に牧 歌的な周囲の景色と恐ろしくミスマッチな一団が待機していた 道路に沿ってパークするのはM4中戦車が3両とM3中戦車が5両 そしてハーフトラックに分乗したアメリカ軍の機械化歩兵部隊だった 「アルフちゃん大丈夫っスかねえ?」 「確かに少しばかり時間が掛かり過ぎているな…」 生垣の影から双眼鏡で村を観察するカッパドジア中尉とフェルマー少尉は敵に獣人がいる とグリースの匂いで気付かれるからと銃を持たずグルカナイフに似た曲刀ひとつを身に帯 びて斥侯に向った獣人の女兵士の身を案じている この頃になるとアメリカ軍でも人間より五感の鋭い獣人をスカウトとして使う部隊が増え ていたが派遣されてくる兵士が何故か見栄えの良い若い女性ばかりというところに微妙に 下心が感じられなくもない 不意にカッパドジアの視界の隅に白い物体が投げ込まれる 双眼鏡の焦点を合わせるとそれは全裸に剥かれ豊かな胸に短剣を突き立てられた狐耳の女 兵士だった 「皆殺しにしてやる…」 カッパドジアはシシリー島のカポ(大親分)だったという曽祖父を彷彿とさせる声色で呟 いた 639 :外伝(またはパラレル):2008/02/02(土) 00 27 05 ID OiXF2z220 「行け、“サラマンダー”シホット共を焼き殺せ!」 カッパドジアに激を飛ばされシャーマン戦車が動き出す レデンツの戦いの初期の頃には生垣を“跨いで通る”ことの出来るキリラルブスがアメリ カ軍の戦車に対して優位に立っていたが、やがて生垣を根元から切り崩すフォーク型のア タッチメントを取り付けた戦車が登場し両者の力関係は再び戦車優位に傾いている そして最近になってアメリカ軍が投入したもう一つの新兵器が正式名称POA-CWS- H1、非公式には“サラマンダー”と呼ばれる火炎放射戦車だった これはM4中戦車の75ミリ砲に火炎放射器を組み込むとともに車内にナパーム燃料1, 100リットルを収容する燃料タンクを設置したもので射程は最大でも70メートル、砲 塔内に燃料パイプを通す関係から砲塔の旋回範囲が260度に制限されるというデメリッ トはあるものの、ボカージに潜む敵兵に対しては絶大な効果があった そして火炎放射型M4を後方から支援するのは車体に75ミリ砲、旋回砲塔に37ミリ砲 を搭載するという変則的な武装配置が特徴のM3中戦車だった “真っ当な”主力戦車であるM4が完成するまでのストップギャップとして各型合計6, 000両以上が生産されたM3はアメリカ軍が南大陸の戦いにデビューした1482年 (1942年)4月の時点で陸軍の全戦車戦力の55%を占めていた 1483年(1943年)9月には機甲師団の戦車大隊(軽戦車中隊を除く)の装備はM 4に統一されていたが独立戦車大隊には多数のM3が在籍していた 陸軍機甲軍は1943年中にはM3を全車退役させたいと考えていたのだが、実際には本 国から送られる戦車は全て損害の補充に回される状態で-10月だけで275両の戦車を 失っていた-M3の退場はまだまだ先になりそうだった 砲身から伸びる炎の帯を鞭のように振るい鉄の火竜が村落の周囲を焼き払っていく 部隊のアイドルだった女兵士を惨殺され激昂したアメリカ兵達だったが住民が居残ってい る可能性を考慮し無差別に建物を攻撃しないだけの理性は残っていた まず生垣を掃除してから農家の制圧に取り掛かる段取りで行動を開始した戦車隊は果樹園 の中に潜んでいたキリラルブスに気付かずに側面を晒したM4の1両が命中弾を受けて炎 上したものの、M4を仕留めたキリラルブスもM3の迅速な反撃を受けて退避する間もな く撃破された 車高が高く乗員の多い-七人兄弟用棺桶という有難くない仇名もある-M3は見通しの悪 い地形での見張り能力が高かった そして戦闘の終盤になってM3のギミックが生かされる事態が起きた それは久方振りの空襲で珍しくもシホールアンル軍のワイバーン2騎が現われアメリカ戦 車に襲い掛かってきた 低空で飛来し炎のブレスを叩きつけようとするワイバーンに対しM3は砲塔の37ミリ砲 を指向する M3の37ミリ砲は何故か対空戦闘にも使えるよう最大60度まで仰角が取れる そして37ミリ砲にM2キャニスター弾を装填した5両のM3が一斉に発砲すると、1発 当り122粒の散弾が扇状に広がり散布界に突っ込んだワイバーンは一瞬にして挽肉と化 した 戦闘は夕刻には終結しシホールアンル兵は自ら投降した3名を除き全員が射殺された GI達に愛された陽気な女性スカウトは村外れの草原に葬られた 640 :外伝(またはパラレル):2008/02/02(土) 00 29 38 ID OiXF2z220 投下終了です